全 情 報

ID番号 00013
事件名
いわゆる事件名 大映事件
争点
事案概要  共産党員もしくはその同調者であることを理由とする解雇につき、具体的な業務阻害行為については解雇理由とすることができるとした事例。
参照法条 労働基準法3条
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1954年9月4日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ワ) 873 
裁判結果
出典 労働民例集5巻5号485頁
審級関係
評釈論文
判決理由  日本国憲法中のこれらの条項の定める国民の自由及び権利は、国家又は公共団体に対するものであって、国家又は公共団体は国民に対しこれらの自由及び権利を立法その他の国務に関する行為によっても不当に制限抑圧し得ないとする趣旨であって、私人相互間の私法関係に於ける意思表示又は法律行為については直接憲法のこれら規定が規律するのではなく憲法のこれら条項をうける民法第九十条に所謂「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」により或は労働基準法第三条等によってその適否を規律せらるべきものと解すべきである。而して労働基準法第三条によれば、使用者が労働者の信条等を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱を為すことを禁止しており、右信条とは単にこれを宗教的信条に限定すべき根拠がなく政治的信条をも当然に含むものと解すべきであり、又解雇も亦これを労働条件と見なければならぬこと前記の如くであるから、本件解雇が原告等を単に共産主義者乃至その同調者たることの故に為されたものであるとすれば正に右法条に反し無効としなければならない。しかしながら本件解雇中原告X1、X2、X3三名に関する分は単に右事由のみを以てしたのではなく前出解雇基準の示す如く、共産主義者又はその同調者であって煽動的言動等によって被告会社の事業の正常な運営を阻害し又は阻害する虞あるものを解雇せんとしたのであって、かような企業の正常な運営を阻害し他人の権利を侵害する如き行為に出づる者を解雇すること迄をも右法条は禁じているものでないことは明らかであるから本件解雇基準は右法条に反することなく又原告等のうち前認定の如くこの解雇基準に該当する行為のあった原告X1、同X2、同X3を解雇したことを無効と解すべき理由がない。