全 情 報

ID番号 00105
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 東築紫学園事件
争点
事案概要  過去一年半に二度にわたり契約の更新を受けていたが雇止めされた私立高校の非常勤講師が、右契約期間満了後は専任教諭として雇用する旨の約束があり、右雇止めは解雇にあたり、しかも相当の理由なき解雇として無効である等として労働契約上の権利の存在確認等を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法9条,14条,21条
民法1条3項,628条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1983年5月24日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 762 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ502号163頁/労経速報1169号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―労働者―適用事業の範囲〕
 原、被告間の右委嘱の性質について、原告は労働契約であると主張するのに対し、被告は民法上の準委任契約であると抗争するところ、被告が労働基準法八条一二号所定の教育事業を行うものであることは前認定のとおりであり、(証拠)によれば、原告は、毎週、被告から定められた日に、定められた時間数学の授業を担当してきたものであること及び出勤簿への捺印等を義務付けられていたことが認められるところからすれば、少なくとも、原告は、授業の時間等被告の業務を遂行している間、その指揮監督下に置かれていたといわなければならず、また、原告が被告から賃金の支払を受けていたことは、当事者間に争いがないのであるから、右諸事情に照らせば、原告が同法九条にいう労働者に該当することは明らかであり、原被告間の委嘱の性質は、同法第二章に定める労働契約というべきである。
 〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 期間の定めのある雇傭契約であっても期間の満了毎に当然更新されあたかも期間の定めのない契約と実質において異ならない状態にあって当事者も右契約の更新継続を当然のこととして期待信頼してきた場合には更新拒絶を正当とすべき特段の事情のない限り、期間満了を理由とするいわゆる傭止めは実質において解雇であり、労使の信義則上許されないと解するのが相当である(最高裁判所昭和四九年七月二一日判決)。以下これを本件についてみるに、(中 略)。
 右2の認定に係る諸事実を総合すれば被告の原告に対する三回の非常勤講師の委嘱は、そのいずれもが病休等教諭の一時的代替の性質、程度以上のものではないことが明らかであって原被告間の雇傭契約が実質において期間の定めのない状態であったとは到底認められないし、また、2(三)の(イ)ないし(ト)の認定の諸事実は、所詮学校運営ないし職員人事に関する事務的又は末梢的な事柄にすぎず、或は原告に対する被告の特別な好意的待遇といえることはあっても、原告において昭和五四年度以降も契約が当然更新され継続して雇傭される旨期待する客観的、合理的期待がある状況になかったことを明らかに示すものであり、契約更新に対する原告の期待は個人的且つ主観的な期待ないし願望にすぎないという外はないし、また、本件の場合、原告を含む非常勤講師に対する被告の雇傭体制が労働保護法規の潜脱を目的とする違法不当なものともいえない。
 してみると原被告間の雇傭契約は昭和五四年三月三一日の期間満了によって終了するものであって、その傭止めに解雇の法理を適用する余地はないと解すべきであるから、原被告間の雇傭関係は右期間の満了をもって終了したといわなければならない。