全 情 報

ID番号 00112
事件名 解雇予告手当金等請求控訴事件
いわゆる事件名 山徳商店事件
争点
事案概要  会社の取締役の地位にはあるが名目的なものにすぎず実質的には他の従業員と異ならない業務を遂行していた原告(被控訴人)が即時解雇されたため、解雇予告手当と付加金の支払を求めた事例(一審認容、二審付加金の遅延損害金を除き認容)。
参照法条 労働基準法20条1項
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
退職 / 合意解約
裁判年月日 1985年2月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (レ) 133 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1211号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 次に、控訴人は、被控訴人は退職することを合意した旨主張するが、控訴人代表者及び被控訴人本人の各尋問結果によると、被控訴人は、本件解雇の通告を受けた際、解雇には不服があったものの、当日までの給料を黙って受領した事実が認められるにとどまり、これを超えて被控訴人が退職することを控訴人会社と合意したことを認めるに足りる証拠はなく、右認定事実から黙示的に退職の合意がされたと評価することもできない。
〔労基法の基本原則-労働者-取締役・監査役〕
 更に、控訴人は、被控訴人は控訴人会社の取締役であったから解雇予告手当を請求できない旨主張する。しかし、成立に争いのない(書証・人証略)によると、本件解雇当時、被控訴人は、控訴人会社の取締役であり、社内での地位は代表者Aに次ぎ、他の従業員の最上位にあり、他の従業員に賞与が支給される場合も、被控訴人にはその支給がなかったことが認められるものの、他方、右の各証拠によると、控訴人会社は、Aのいわゆるワンマン会社であって、重要な指揮命令はすべて同人から発せられており、一応法人組織となっているが、それは税務対策上のもので、株主総会や取締役会を適式に開催することもなく、A以外の役員はすべて名目的地位を有するにすぎず、現に被控訴人の業務内容は他の従業員とさして違わなかったことが認められ、この認定に反する証拠はないから、これらの事実関係に照らすと、被控訴人は、取締役としての地位のほかに、労働者としての地位をも有しており、その受領していた給料は労働者としての地位に基づくものと認めるのが相当であるから、取締役の地位にあったからといって解雇予告手当の請求権を失うものではない。