全 情 報

ID番号 00129
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 中本商事事件
争点
事案概要  会社の解散による解雇につき、右会社の親会社との間に雇用関係があるとして、従業員としての地位の保全等を求めた仮処分の事例。
参照法条 労働基準法2章
商法95条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
裁判年月日 1979年9月21日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ヨ) 523 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報955号118頁/労働判例328号47頁
審級関係
評釈論文 奥山明良・労働判例332号4頁
判決理由  債権者らが分会を結成した後、A会社が解散され、これを理由として債権者らが解雇されるに至るまでの経過、債務者会社とA会社の支配従属関係および分会結成後の使用者側との折衝経過(ことにA会社の役員でもないB一族の者が右折衝に加わっていたこと)と分会結成以前にA会社の営業継続が困難とみるべき事情があったことを疎明するに足りる資料のないこと(なお、昭和五〇年の末頃からC会社の一部工場閉鎖などによって営業成績が下降していたことは疎明されるが、これは債務者会社の取引上の協力やA会社の企業規模の縮少その他の企業努力により容易に克服しえ、営業を廃止しなければならないほどのものではなかった)などの点を総合すると、債務者会社代表者らB一族は、債権者らが分会を結成して組合活動をしたことを嫌悪し、これが他のBグループの子会社に波及するのをおそれ、右組合を壊滅する目的から、A会社の代表者であったDやEらに指示したが少くとも同人らと相謀り企業閉鎖にはじまる前記一連の経過を経て本件解散をなすとともに、これを理由として債権者らを解雇するに至ったものと一応推認できる。
 ところで、会社の解散が偽装ではなく、真正になされたうえ、これにもとづき労働者が解雇された場合その動機にかかわらず右解散と解雇は有効とみる他ないのであるから、このように、債務者会社がA会社の役員を指示し或いは同人らと相謀り、もともと営業継続が困難な事情もないのに、分会壊滅の目的で、前記分会結成以後において、営業所の閉鎖A会社との取引の停止、車輛等の運送手段の売却処分等を経て、A会社の企業継続を不能とする事態を招来したうえ、これを解散するに至らせ、これを理由として債権者らの解雇がなされ、これによって債権者らのA会社に対する雇用契約上の被用者としての地位を失わしめる結果をもたらすことは、結局において債務者会社が不当労働行為意思にもとづいてA会社の法形式上の独立性ないしは会社制度を利用したものというべく、このような場合にも法人格の濫用に該当するものというべきである。
 したがって、A会社に対して雇用契約上の地位を有していた債権者らに対する関係においてA会社の法人格を否認し、直接親会社たる債務者会社に雇用契約上の使用者としての責任を認めるのが相当である。
 そうすると、この限度ではA会社の解散にもとづく解雇も本則に帰って不当労働行為(労働組合法七条一号、三号)に該当するものとして無効となり、債権者らとA会社との間の雇用契約上の地位は、そのまま債務者会社との間で存続するものと解するのが相当である。