全 情 報

ID番号 00137
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 三和運送事件
争点
事案概要  年休の時季指定を当日行い年休を取得した場合を無断欠勤八・八回分に相当する減点要素とする出勤率を含む整理解雇基準に基づき解雇された従業員らが、右出勤率の計算方法は労働基準法三九条に違反し、これを含む基準による解雇は無効であるとして会社とその親会社双方での地位保全等求めた仮処分申請の事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法10条
民法1条3項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1984年9月3日
裁判所名 新潟地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ヨ) 268 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例445号50頁/労経速報1217号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―使用者―法人格否認の法理と親子会社〕
 A会社は、昭和二三年一二月B会社の構内及び通運の各作業の下請会社としてB会社の出資により設立されたものであって、従前は被申請人Y1会社とは何の関係もなかったこと、被申請人Y2会社の役員中、代表者は被申請人Y1会社からの出向者ではあるが、非常勤であり、常勤の最高責任者C常務はB会社・D会社の出身者であり、Y1会社関係者のみで役員が構成されているわけではないことが一応認められ、右事実に本件に顕れた諸般の事情を併せ勘案すれば、被申請人両会社の事業内容、経営形態、経理状況、従業員に対する待遇等々は、それぞれ独立して行われているものというほかはなく、本件全疎明資料によるも、被申請人Y2会社の法人格を否認すべき事情即ち法人格が全くの形骸にすぎないとか、法律の適用を回避するために濫用されているとかの事情は認められない。従って、被申請人Y1会社と選定者らとの雇用関係を認めることもできない。
 〔解雇―整理解雇―整理解雇の要件〕
 右のように解雇が労働者の生活に深刻な影響を与えるものであることを考慮すると、企業がその存立維持のため労働者の責によらない事由により解雇する場合には、一定の制約を受けることを免れないものというべきであり、解雇権の行使の仕方によっては、権利濫用の評価を受けることとなると解するのが相当である。
 そして、当該解雇が権利濫用となるかどうかは、企業側及び労働者側の具体的事情を総合して解雇に至るのもやむを得ない客観的・合理的理由が存するか否か、並びに解雇の手続が相当であったかどうかに帰するものであり、主として次の諸要素を考察して判断すべきものと解する。
 即ち、第一に当該解雇を行わなければ企業の維持存続が危殆に瀕する程度に差し迫った必要性があるかどうかであり、第二に解雇をする前にこれを回避するため十分な努力をすると共に、それが避けられず解雇をする場合には、解雇による労働者の犠牲を最小限にするための努力がなされたかどうかであり、第三に解雇をするにあたっては、当該労働者に対し、事前にその解雇のやむを得ない事情と解雇の時期、規模、方法等について十分説明をし、労働者の納得を得られるように努力したかどうかであり、第四に整理基準及びそれに基づく人選の仕方が客観的、合理的なものであるかどうかであり、右四つの要件を具備しない限り、当該解雇は解雇権の濫用として無効となると解するのが相当である。