ID番号 | : | 00173 |
事件名 | : | 雇用関係確認、賃金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大日本印刷事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | グルーミーな印象であることを理由とする採用内定取消につき、採用内定通知により解約権を留保した労働契約が成立するとして、本件取消は解約権の濫用に当るとした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法623条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 採用内定 / 法的性質 労働契約(民事) / 採用内定 / 取消し |
裁判年月日 | : | 1979年7月20日 |
裁判所名 | : | 最高二小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (オ) 94 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 民集33巻5号582頁/時報938号3頁/タイムズ399号32頁/労経速報1020号3頁/裁判所時報769号1頁/金融商事586号43頁/裁判集民127号259頁 |
審級関係 | : | 控訴審/00169/大阪高/昭51.10. 4/昭和47年(ネ)458号 |
評釈論文 | : | 安枝英のぶ・労働判例364号19頁/角尾隆信・労働経済旬報1179号16頁/橋詰洋三・季刊労働法113号157頁/橋詰洋三・判例評論257号41頁/後藤清・労働判例323号15頁/砂山克彦・法律のひろば32巻10号66頁/秋田成就ほか・労働判例330号4頁/西谷敏・民商法雑誌82巻4号526頁/中嶋士元也・ジュリスト701号77頁/木村五郎・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕24頁/林修三・時の法令1048号55頁/萬井隆令・昭和54年度重要判例解説〔ジュリスト718号〕261頁/萬井隆令・日本労働法学会誌55号104頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約―採用内定―法的性質〕 本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であって、被上告人の本件誓約書の提出とあいまって、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する。 〔労働契約―採用内定―取消し〕 採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係によれば、本件採用内定取消事由の中心をなすものは、「被上告人はグルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかった。」というのであるが、グルーミーな印象であることは当初からわかっていたことであるから、上告人としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたのに、不適格と思いながら採用を内定し、その後右不適格性を打ち消す材料が出なかったので内定を取り消すということは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用というべきであり、右のような事由をもって、本件誓約書の確認事項二、(5)所定の解約事由にあたるとすることはできないものというべきである。 |