全 情 報

ID番号 00271
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 尾州紡績事件
争点
事案概要  会社による配転命令拒否を理由に解雇された労働者が、右配転命令および解雇は政治的信条を理由とする差別的取扱いであり、憲法一四条、労働基準法三条等に違反し無効であるとして地位保全を求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法3条,2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1969年9月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 1252 
裁判結果
出典 労働判例93号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (1)総務部勤務を免ずる処分
 前項(3)記載の事実によれば、会社が申請人に対してなした総務部勤務を免じ、寮待機を命ずる処分は始末書不提出を理由とする実質上の懲戒処分と解すべきところ、就業規則および労働協約にかかる処分の規定がないことは前記認定のとおりである。してみれば右処分は法的根拠がないのに、会社が恣意になした処分であるというべきであるから、無効であるといわなければならない。
 (2)配転命令
 (中 略)
 会社が右配転命令を発した主たる目的は、会社がかねて労音を共産党ないし民青同によって指導せられている団体であると思惟していたため、労音会員である申請人も、右指導者らと同一の政治的信条を有するものと考え申請人が同僚を誘って労音サークルを組織したり、種々の労音集会に出席したりして、労音活動をなすことを痛く嫌悪し、申請人を本社より排除するためであったことが認められる。申請人を本社勤務から太田工場勤務に変更することは、労働条件の変更であるというべきであるから、結局右配転命令は、申請人の政治的信条を理由として労働条件について差別的取扱いをしたものといわなければならない。よって右配転命令は労働基準法第三条に違反し無効であるというべきである。
 (3)解雇
 前項(1)、(2)、(4)ないし(6)記載の事実を総合すれば、会社は申請人の労音活動を嫌悪し、申請人を本社から排除しようとしたが、それが効を奏しなかったので、ついに終局的に申請人を会社より排除すべく、本件解雇をなすに至ったことが認められる。してみれば右解雇は会社が申請人の政治的信条を理由として、労働条件について差別的取扱いをなしたものというべきであるから、労働基準法第三条に違反し、無効であるといわなければならない。
 四、以上の理由により、会社のなした総務部勤務を免ずる処分、配転命令、解雇はすべて無効であるから、申請人は現在もなお会社の本社総務部勤務の従業員たる地位を有するものといわなければならない。