全 情 報

ID番号 00283
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 竹本油脂事件
争点
事案概要  配転命令を拒否(後に受諾)した労働者が就業規則に基づいて懲戒解雇されたので、解雇無効確認等を請求した事例。(原審 請求認容、当審 控訴棄却)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1975年4月15日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 23 
裁判結果 棄却
出典 労働判例229号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕
 本件配転命令は控訴人会社が労働契約に基づいて有する包括的な職務および職種の変更権能の行使としておこなわれたものであり、それが権利の濫用であることを認めるに足りる資料はなく、またそこに被控訴人に対する思想信条あるいは労働組合活動を理由とする差別待遇の意図を看取するに足りる資料も存しないこと前記のとおりであるから、右配転命令は適法なものというべく、従って被控訴人が辞令の返上という表現で右配転命令に対する不服従の意思を表明し、さらに配転先において就労すべき同月二六日に従前の職場に出勤し就労するという行動に出たことは、就業規則9・5・3にいう「故なく会社の業務上の指示・命令に服従せず、または事実上の秩序をみだしたとき」に該当するものといわなければならない。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 就業規則9・5・3所定の懲戒事由はその文言のみからすれば企業内における秩序撹乱行為のすべてをその種類・程度を問わず包摂するものであり、就業規則9・5はこれに対し原則として懲戒解雇をもって臨むことを規定しているのであるが、懲戒解雇は使用者が労働者に対してなし得る最高の懲罰的措置であり、労働者にとっては多くの場合生活の基盤を失うことに通じるものであるから、右懲戒規定にはその文言にかかわらず企業秩序撹乱のうちでも特に情状が重くその者を企業外に排除するのでなければ以後企業秩序の維持が困難になる程度のものに対してのみ懲戒解雇をもって臨むという限定が内在しているとみるべきであり、右限度を超えてなされた懲戒解雇は権利の濫用として無効であるといわなければならない。
 (中 略)
 被控訴人は本件配転命令が法令に違反することの確証をもたないままその違法を信じてこれに反抗し、結果において自己が労働契約上の義務に違反することになったのであって、被控訴人のこの点にみられる軽卒さないしは独善性は企業秩序を混乱させる危険をはらむものとみられてもやむを得ないものであるから、被控訴人の行為に対し相応の制裁が加えられてしかるべきであるが、被控訴人は結局において配転を承諾したのであり、それまでの間に控訴会社の業務に著しい停滞その他実害を生ぜしめたことを認むべき証拠はない。
 (中 略)
 から、被控訴人に直ちに企業から排除すべき秩序撹乱行為があったものということはできない。