全 情 報

ID番号 00296
事件名 転勤命令効力停止仮処分異議控訴事件
いわゆる事件名 川崎炉材事件
争点
事案概要  積極的な組合活動家である本社研究所研究員が、東京営業所(セールスエンジニア)への転勤命令効力停止の仮処分を申請し認容されたので、会社が異議を申立た事例。(一審 仮処分決定取消、申請却下、当審 控訴棄却)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1976年11月26日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 1697 
裁判結果 棄却
出典 労働判例266号28頁
審級関係
評釈論文
判決理由  本件疎明の事実によれば、本件転勤命令は、被控訴会社が業務上の必要に基づき、転勤適任者らの各個人的事情をも慎重に彼此勘考した結果、控訴人を転勤最適任者と判断して発したものであり、被控訴会社の業務上の必要を決定的原因としてなされたものであって、控訴人が労働組合の正当な行為をしたことの故をもってなされたものではなく、また、特に異常視されるほど不自然・不合理なものでもないと思料される。
 いずれも成立に争いのない(証拠略)によると、本件転勤命令発令当時、被控訴会社の就業規則によれば、被控訴会社は業務の都合により控訴人に対し、控訴人の同意がなくても、工場・事業場間の転勤を命じ得ることになっており、控訴人の属するA株式会社労働組合は、被控訴会社との間の労働協約により、被控訴会社の右権限を承認していたことが疎明されるところ、被控訴会社が右の権限を有することは、その組織・機構上、当然のことであって、別に公序良俗に違反するものではなく、労働組合において被控訴会社が右の権限を保持していることを承認することは、組合自体の行為として有効であり、そのことによって個々の組合員の有する居住・移転の自由なる基本的人権を殊更に処分したというわけのものではない。ところで、本件疎明の事実によれば、本件転勤命令は、被控訴会社と控訴人との間の労働契約関係からみて、合理的な範囲内のものと思料される。従って、本件転勤命令により、控訴人において、その住所を移転せざるを得なくなり、その結果、幾何かの不利益を生ずるとしても、それは、当該転勤をなす者すべてについて、程度の差こそあれ、当然生ずるべき性質のものと思料されるから、被控訴会社の一員として、その組織に属する控訴人においても、これを忍受すべき筋合であるといわなければならない。そうすると、本件転勤命令が、控訴人に対し不利益を与えるにも拘らず、控訴人の同意なくしてなされたからといって、そのことにより、本件転勤命令を無効視することは、到底できないところである。