全 情 報

ID番号 00313
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 三和電気製作所事件
争点
事案概要  会社の配転命令を拒否したことを理由に懲戒解雇された従業員が、右懲戒解雇は不当労働行為、懲戒処分権の濫用にあたり無効である等として地位保全等求めた仮処分申請の事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1983年1月24日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和56年 (ヨ) 1029 
裁判結果 却下
出典 労経速報1144号3頁/労働判例403号52頁
審級関係
評釈論文 小嶌典明・季刊労働法128号113頁
判決理由  しかしながら、前記二1認定のとおり、会社の就業規則二九条には、業務の都合により必要がある場合は従業員に転勤・職種の変更等を命ずることがあり、この場合従業員は正当な理由なくこれを拒否してはならない旨規定されていたこと、申請人は、入社直後会社からの指示に基づき、就業規則その他の諸規定を堅く遵守する旨の誓約書を提出していること、申請人は、入社に際して、ないしその後本件配転命令に至るまでの間に、会社との間で、労働の種類、態様を現場の製造業務、労働の場所を大阪の会社工場にそれぞれ限定する趣旨の明示的な話合いをしたことは全くなかったこと、などの事実に徴すると、申請人は、入社に際して、労働の種類、態様、場所を決定または変更する権限を会社に委ねたものというべきであり、会社から業務上の必要性があって、転勤、職種の変更等を命じられた場合には、正当な理由がなければこれを拒むことができず、これに従う義務を負ったものというべきである。本件配転命令は、右の会社が申請人から委ねられた労働の種類、場所等を変更する権限に基づき、就業規則二九条所定の異動の命令として、申請人に対し名古屋出張所への転勤及びこれに伴う職種の変更を命じたものであることは明らかであるから、申請人は、正当な理由なくこれを拒否しえず、これに従う義務を負うものである。
 したがって、本件配転命令が単なる労働契約内容改訂の申入れにすぎないとし、これを根拠に申請人には右配転命令に応ずる義務はなく、申請人がこれに応じないことを理由とする本件懲戒解雇は効力を有しない旨の申請人の前記主張は、理由がないといわなければならない。