全 情 報

ID番号 00360
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 姫路赤十字病院事件
争点
事案概要  疾病により左足大腿部切断手術を受け療養していた申請人が休職処分とされその後申請人の復職要求にもかかわらず一年の休職期間の満了を理由に退職扱いとされたため、地位保全及び賃金支払の仮処分を求めた事例。(却下)
参照法条 労働基準法2章
民法627条
体系項目 休職 / 休職の終了・満了
裁判年月日 1982年2月15日
裁判所名 神戸地姫路支
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ヨ) 65 
裁判結果 却下
出典 タイムズ471号200頁/労働判例392号58頁/労経速報1128号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  そして、(証拠略)によれば本件病院の職員就業規則において、公症を除く病気欠勤が六ケ月以上に及び、尚勤務に堪えないときには休職とされること(第五六条一号)、右休職期間は、満一年とし、休職期間が満了したときは、自然退職とする(第五七条二号)旨、それぞれ、定められていることが認められる。右規定を合理的に解釈すれば、勤務に堪えない状態で病気欠勤が六ケ月以上に及んで休職の取扱となり、右状態が満一年継続したときに自然退職となるものと解すべきであるから、債務者が債権者に対して自然退職を理由として債権者の労働契約上の権利(被保全権利)の消滅を主張するためには債権者が休職期間中、本件病院におけるボイラー技師としての勤務に堪え得ない状態が継続したことを主張、立証すべきである。
 (中 略)
 三 ところで、病院におけるボイラー技師は、その性質上、高度な安全確保の能力を要求されるというべきであり、単に日常業務を遂行しうるだけではなく、緊急時においても、できる限り危険の増大を防ぎ、災害を他に及ぼさないように対処することのできる能力が備わっている必要があると考えられる。この観点から本件について考察するに、債権者は、前記二1項の(二)、(三)の前段で認定したように、左下肢大腿部を切断しながらもリハビリによって運動能力の面で相当な成果を挙げ、日常生活においては殆んど不便、苦痛を感ずることはないものと考えられるが、前記二4項の(一)で認定したとおり、ボイラー技師としての職場は、かなり複雑な動きを要求されるところであって、一部には身体障害者にとってはかなり危険とも思える作業内容を含むものであり、長期間勤務する間には、危険の発生を招来する虞れなしとはせず、更に同(二)で認定した緊急事態に対処する能力は、前記二1項の(三)の後段で見た債権者の現状及び二4項(三)で認定した勤務体制に照すと、不安を感じることを禁じえないというべきである。
 (中 略)
 従って、以上を総合すれば、債権者には未だ「勤務に堪えない」状態が存すると解するのが相当である。