全 情 報

ID番号 00399
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 並木精密宝石秋田工場事件
争点
事案概要  雇用期間を一ケ月とする雇用契約を三年間にわたり機械的に反覆更新されていたパートタイマーが、不況を理由に雇止めされたのに対し、右雇止めは過去の組合活動を理由とする不当な差別的解雇で解雇権濫用にあたり無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法14条,21条
民法1条3項,628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1983年8月26日
裁判所名 秋田地湯沢支
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ヨ) 19 
裁判結果 認容
出典 労経速報1167号11頁/労働判例417号57頁
審級関係
評釈論文
判決理由  債権者は右労働契約は期間の定めのないものであると主張し、債権者本人尋問の結果中には、右主張に符合する供述部分があるが、(人証略)には、債権者と面接した際、パートタイマーは期間を一か月とする契約である旨の説明がなされた旨の供述部分があること、前記2疎明事実によれば債務者がパートタイマーを採用する場合は、期間の定めのない契約をする正社員と違ってその手続が簡略で秋田工場の人事担当者との面接で即日採否が決せられていること、債権者を採用する直前からパートタイマーについては期間一か月とする契約書をわざわざ作成するようになり、債権者の場合にも、労務に従事する最初の日に右契約書を作成していることが認められ、これらからすると債権者の右供述部分は信用することができず、債権者の右主張は理由がなく、他に期間を一か月とする労働契約をなしたことの認定を覆えすに足りる疎明はない。また債権者は債権者の労働契約は期間の定めのない契約に転化したものである旨主張し、確かに、前記2疎明事実によれば、債権者の労働契約は昭和五四年四月から昭和五七年四月までの間、反覆更新されており、しかもある程度機械的にこれがなされていることが認められるが、右事実だけでは、他に特別な法的根拠が認められない以上、途中で期間の定めのない契約に転化するといえないことは明らかであり、債権者の右主張も理由がない。
 債権者と債務者の労働契約が一か月の期間の定めのある労働契約であるとしても、右契約の当初において債務者は債権者に長期間勤務することを要望し、債権者もこれを承諾していたこと、右契約が約三年もの間、三六回に亘り機械的に反覆継続してきたこと、右契約と同様のパートタイマーについても、パートタイマー本人が特に希望しないかぎり、契約の更新が当然なされてきたこと、更には債権者らパートタイマーの労働の内容は臨時社員はもちろん、正社員と同一のものでほとんど差異がないことが認められ、以上からすると、右契約の期間は一応一か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されることが予定されていたと解するのが相当であり、しかも単に期間が満了したとの理由だけでは債務者は傭止めをせず、債権者らパートタイマーもこれを期待かつ信頼し、このような相互関係のもとで労働契約関係が存続、維持されてきたものであり、したがって債権者の意思にかかわらず、期間満了によって労働契約関係を終了させるためには、傭止めの意思表示が必要であるばかりでなく、右傭止めをするについても、従来の取扱いを変更してもやむを得ないと認める特段の合理的な事情が存することが必要であると判断することが相当であると解するところ、債務者の債権者に対する雇傭契約を解約する旨の意思表示は、前記2疎明事実によれば、傭止めの意思表示と解することが相当である。
 (中 略)
 右疎明事実に前記2疎明事実を考え併せると、債権者は右労働組合の一員として右労働組合の運動を積極的に推進したもので、債務者の時間短縮がパートタイマーの前記の雇用保険の被保険者資格取得を阻害する趣旨でなされた疑いが強いことを考慮すると、債権者に対する配置転換や傭止めの意思表示は債権者を嫌避してなされたといわざるを得ない。
 6 以上によれば、他に右傭止めについて特別な事情の主張、疎明がない以上、債務者の債権者に対する傭止めの意思表示は期間満了によって労働契約を終了させることを認めるに足りる特段の合理的な事情があると認められないうえ、債権者を嫌避してなされたものである以上、右傭止めは効力がないものといわざるを得ない。したがって債権者と債務者との間には、期間一か月とする労働契約が、毎月一日、更新されており、有効に存続しているということができる。