全 情 報

ID番号 00540
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 岡本自転車事件
争点
事案概要  労働基準法二〇条所定の手続に違反してなされた解雇につき被解雇者が地位保全の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法20条
体系項目 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
裁判年月日 1949年7月1日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 昭和24年 (ヨ) 204 
裁判結果
出典 労働民例集1巻1号123頁
審級関係
評釈論文
判決理由  被申請会社が昭和二十四年六月七日申請人等に対し申請人等を「六月八日附をもって解雇する」につき「六月九日以後出勤に及ばない」旨、すなわち申請人等を即時に解雇する旨通知を為したこと、右通知書中に「六月八日迄の賃金および退職手当と共に予告手当金三十日分を各所属勤労係において支払をする」旨記載のあったことは当事者間に争ないところであるが申請人等提出の各疎明資料によると、被申請会社は前記解雇処分の効力を生ずべき六月八日の当日は勿論その後においても同月十五日頃までは予告手当金のなす準備全然なく、右手当金受領のため出頭した被解雇者に対しその支払を実施し得なかったことが瞭かである。尤も被申請人挙示の疎明資料によると、被申請会社はその後に至り支払の準備を完了し同月二十三日右金員を名古屋法務局に供託した事実を認め得るけれども、右供託手続はその時期において既に遅延し居るのみならず、その前提要件たる申請人等が弁済の受領を拒み又は弁済受領不能の状態にあったことにつき疎明がないから供託としての効力を生じ得ないこと言をまたない。
 右のように被申請会社の申請人等に対する本件解雇処分は労働基準法第二十条の趣旨に違反し、被申請会社所期の即時解雇の効力を生じ得ないこと勿論であって(但し右行為が同条所定の解雇予告としての効力を有し予告期間三十日を経過した七月八日以後において解雇の効力を発生する余地ありや否やは別問題である)、従って右解雇処分の無効なることを前提とし申請人等が現在なお被申請会社の従業員たる地位を失わぬとなす申請人等の主張は正当であって採用に値する。