全 情 報

ID番号 00552
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本国際連合協会事件
争点
事案概要  一、小切手による解雇予告手当の支払いは許されないとして、小切手の受領を拒んだ者に対する解雇が、右手当の支払いなくしてなされたものとされた事例。
 二、非協調的性格を理由とした解雇が解雇権の濫用に当たらないとされた事例。
参照法条 労働基準法20条1項,24条1項
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当の支払方法
裁判年月日 1964年4月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ヨ) 2181 
裁判結果
出典 労働民例集15巻3号411頁/タイムズ162号130頁
審級関係
評釈論文 前田政宏・ジュリスト354号117頁
判決理由  その成立について争いのない乙第二号証の一、二及び第一二号証、郵便官署作成部分の成立について争いがなく、証人Aの証言からその余の部分の成立が認められる乙第一号証、同証言からその成立が認められる第九号証及び第一一号証、証人Bの証言からその成立が認められる乙第一〇号証及び第二一号証並びに証人A及び同Bの証言によると、被申請協会は、本件解雇の意思表示をする際、申請人に対し、解雇予告手当二万〇八〇〇円(三〇日分の平均賃金の外に、外語学院手当一二〇〇円を含む。)の外に、申請人が当時受領を拒んでいた昭和三六年七月分から九月分までの給与合計五万三二八〇円を加算した総額七万四〇八〇円を、被申請協会振出で、その取引銀行である株式会社C銀行丸の内支店支払の小切手で、支払のため提供したが、申請人がその受領を拒んだことが認められる。ところで、労働基準法第二四条は賃金通貨払の原則を定めているので、労働協約に定があるなど特段の事情のある場合は格別、右のような小切手によっては、解雇予告手当を有効に支払のために提供したものと解することができず、従って、本件解雇は、解雇予告手当の支払なくして、なされたものといわなければならない。しかしながら、解雇予告手当の支払なくしてなされた解雇の意思表示も、それが即時の発効を意図し、猶予を許さない趣旨のものと認められる場合は無効の意思表示と解すべきところ、本件解雇については、そのような即時発効の解雇を意図していたものと認めるに足りる疎明がないから、同法第二〇条の規定の趣旨にかんがみ、本件解雇は、その意思表示のあった昭和三六年九月二八日から、解雇予告期間である三〇日を経過した同年一〇月二八日に、効力を生じたものと解するを相当とする。従って、解雇予告手当の支払なくしてなされた即時解雇であることを理由として、本件解雇を無効とする申請人の主張は理由がない。