全 情 報

ID番号 00627
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 細川製作所事件
争点
事案概要  使用者のなした整理解雇につき、右解雇は無効であるとして、従業員としての地位の確認を求めた事例。(認容)
参照法条 労働基準法3条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1979年4月25日
裁判所名 大阪地堺支
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 642 
裁判結果 認容
出典 労働判例331号48頁
審級関係
評釈論文
判決理由  一 一般に解雇は、賃金によって生活を維持している労働者及びその家族の生活に重大な打撃を与えるものであるから、軽々に行なわれるべきでないこというまでもない。まして、余剰人員の整理を目的とするいわゆる整理解雇は、通常、労働者の責に帰すべき事由に基づかず、しかも、産業界のほぼ全体が不況にあって再就職の困難な時期に行なわれるので、通常の解雇に比べて労働者に与える影響は一層甚大であるということができる。従って、整理解雇の場合にあっては、労働契約上の信義則により、厳格な要件の具備を必要とするものというべく、その要件としては、〔1〕整理解雇を行なわなければ、企業の維持・存続が危機に瀕する程度に差し迫った必要性があること〔2〕整理解雇に至る過程においてこれを回避し得る相当の手段を講じたこと〔3〕整理解雇の必要性・時期・規模・方法等について労働者側と真摯な協議を行ない、その納得が得られるよう努力したこと〔4〕被解雇者の人選が誠実に、合理的に行なわれたこと、を欠かせない。これらの要件を具備しない整理解雇は信義則違反ないし解雇権の濫用として、無効と解すべきである。
 二 これを本件について考えると、前記第二の認定事実によれば、右〔1〕(整理解雇の必要性)〔3〕(労働者側との協議)の要件は、一応これを具備していると認められる。しかし、
 (中 略)
 本件解雇については、先ず、指名解雇に先立って実施された希望退職者の募集過程において、既に被告は、信義則に反する不当な慰留行為をしており、これは、整理解雇の回避努力を尽すべきものとする前記〔2〕の要件を欠くことに当たり、次に、被解雇者の人選が果していつどのようにしてされたか明らかでなく、さらに、原告ら自身にもその勤務態度について反省し改めるべき点のあったことはうかがえるにしても、被告主張のように、能力低劣者であった、というには、なお多分に疑問が残るのであって、これらは、人選を誠実に合理的にすべきものとする前記〔4〕の要件を欠くことに当たり、結局、被告は、先にみた原告らの従前からの組合活動等を嫌悪し、整理解雇の名のもとに解雇権を濫用(労組法七条一号・三号(不当労働行為)及び労基法三条(思想・信条による差別的取扱)違反行為にも該当。)して、原告らに解雇の意思表示をしたものと認められる。従って、本件解雇はいずれも無効である。