全 情 報

ID番号 00644
事件名 従業員地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 高田製鋼所事件
争点
事案概要  受注減を理由とする人員整理に伴い「三六歳以下で、昭和四三年以降入社の者」という解雇基準に該当するとして解雇された原告が、従業員としての地位確認を求めた事例。(一審判棄却、控訴一部認容)。
参照法条 民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1982年9月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ネ) 1685 
裁判結果 取消(確定)
出典 労働民例集33巻5号851頁/労経速報1136号8頁/労働判例398号38頁
審級関係 一審/00634/大阪地/昭55. 9.29/昭和52年(ワ)285号
評釈論文 中嶋士元也・ジュリスト808号105頁
判決理由  〔解雇―整理解雇―整理解雇の要件〕
 2 ところで、(証拠略)によると、労働協約において解雇を労使の協議事項と定めていることが認められ、就業規則では解雇を「やむを得ない」ときに限定していること等に照らして考えると、いわゆる整理解雇は、労働者に帰責事由のある懲戒解雇と異なり、専ら会社の運営上の理由で労働者を解雇するのであるから、その解雇が有効であるためには、会社において可能な限りの解雇回避措置をとったにも拘らず、なお解雇の必要性がある場合で、しかも整理解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であって、労働組合との協議がつくされていることを要件とし、右要件を欠く整理解雇は信義に反し、解雇権の濫用となると解するのが相当である。                〔解雇―整理解雇―整理解雇基準〕
 1 本件人員整理の入社歴と年令という基準は、会社の経営改善に必要な実質的要素として通常考えられる労働者の勤務態度、将来の企業への貢献度等とは直接関連性を有しない基準であるから、整理解雇の基準としては合理性の低い、いわば次善の策としの基準である。しかし、(人証略)によると、前記実質的要素を基準とするときは労使間の紛議を免れないし、これを避けるべく入社歴の浅い年令の若いという形式的基準を設けたものであること換言すれば企業への過去の貢献度の低さ及び再就職の可能性の大きさを優先的に考慮した括一的基準に外ならないことが認められる。のみならず、一般に入社歴・年令という整理基準に基づいて選定するというのは、アメリカの先任権制度(勤務年数という単一の明確な基準に基づいて一時帰休の順位を決めるものであり、労働協約によって制度化され、一種の社会慣行として定着している。)に類似しており、このような整理基準は形式的であるが故に適用過程において使用者側の恣意が入る余地が少ないという長所があるから、その基準が、当該企業の従業員の年令及び入社歴の構成上合理的に定められるならば、整理解雇の基準として一概に不合理なものと断ずるこはできない。