全 情 報

ID番号 00733
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 雄別炭鉱事件
争点
事案概要  かねてより控訴会社の生産を阻害する行為をしていたところ、具体的な生産阻害行為を共謀企図していることが判明したとして解雇された被控訴人が、解雇の無効を主張した仮処分事件。
参照法条 民法1条3項,627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1966年9月29日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ネ) 217 
裁判結果
出典 労働民例集17巻5号1243頁
審級関係
評釈論文
判決理由  なるほど一般に期間の定めのない継続的な契約関係は、各当事者において任意にこれを終了させることができるのが市民法の原則である。もとより労働者の側からする退職の自由は使用者において容易にこれに代わる労働力を調達し得るかぎり一般市民法原理にもとづきこれを認め得るところであるが、使用者の側からする解雇は労働者にとって生存権、勤労権に連なる問題であって、生産手段の発展とともに労働の態容が一般に単純化し、就業における規律の保持と能率の向上は科学的な原理に導かれた労働管理により達成されるようになった今日においては、正当の事由がなければ解雇できないとは言えないまでも、労働関係が労・使相互の信頼を基礎とした継続的関係であることにかんがみ、解雇がはたす機能との関係で合理性のない解雇はこれを抑制すべきものである。したがって労働契約の解約告知をしようとする使用者がその理由を明確にする必要があるか否かは兎も角として、少くとも使用者が解雇の理由を被解雇者に明示した場合において、その理由に何らの合理性がないか、あるいはその理由を客観的に裏付けることができず、労働関係の全体からみて使用者の解雇権の抑制が相当と認められるときは解雇は権利濫用となり、その効果を否定されるものと解すべきである。