全 情 報

ID番号 00748
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 京浜横浜自動車事件
争点
事案概要  第二組合による就労阻止を理由とする「待期扱」中に他社で就労したことが就業規則の二重雇用禁止規定に違反するとして懲戒解雇された従業員が、右懲戒解雇は解雇権の濫用に当り無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件の異議控訴審(異議控訴一部棄却、一部仮処分決定変更、一部申立人勝訴、他は仮払額減額)
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法1条3項,627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 二重就職・兼業・アルバイト
裁判年月日 1969年12月14日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ネ) 985 
裁判結果
出典 労経速報708号19頁
審級関係 一審/横浜地/   .  ./昭和41年(モ)1867号
評釈論文
判決理由  就業規則三一条一〇号が懲戒解雇事由の一として「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入られたとき」と定めるのは、従業員が就業時間中は勿論のこと就業時間外においても他と継続的な雇用関係ないしこれに準ずる関係に入るときは、その者の会社に対する誠実かつ完全な労務の給付が困難となり、経営上支障を来すことから、使用者において企業秩序を維持するため、一律にこれを禁ずる趣旨のものであると解するのを相当とするから、被控訴人らが、右認定のようにA会社及びB会社に雇われて働いたことは、右就業規則条項に該当するものといわなければならない。
 (中 略)
 本件においては被控訴人らは待期扱とされ、本来の業務に就き得なかったのであるから、同人らが既に認定したように他で稼働したとしても、右就業規則の意図した生産性の維持という目的に直接には相反することがなかったものというべきである。他方、被控訴人らが会社に対し就労させるよう要求を重ねるのみで自らの努力により局面の打開を図ろうとはせず、待期扱となった一カ月後には早くも会社に無断で他で稼働するに至ったことは経営秩序を紊るもので軽率失当の譏を免れないけれども、会社が同人らに対する待期扱という不当の措置を是正するの挙に出ないまま、待期扱による不利益を緩和するためにした被控訴人らの前記所為を就業規則条項に該当するとしてこれを懲戒解雇したことは、徒らに同人らの非を責めるにのみ急なものであって、酷に失するといわざるを得ない。
 従って、被控訴人らに対する本件解雇は解雇権の濫用であって無効であり、同人らは会社の従業員たる地位を有するものというべきである。