全 情 報

ID番号 00843
事件名 雇用関係存在確認請求事件
いわゆる事件名 東芝電気事件
争点
事案概要  原子力プラント耐震設計業務に従事し、神経症等で欠勤療養したことのある従業員が、上司の再三の指示を拒否したこと、勤務成績も不良であること等が就業規則の解雇事由にあたるとして解雇されたのに対し、右解雇は無効であるとして雇用契約上の権利を有する地位の確認等求めた事例。(請求棄却)
参照法条 民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇手続 / 予備的解雇
解雇(民事) / 解雇手続 / 解雇理由の明示
裁判年月日 1983年12月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 6086 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1181号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇手続―解雇理由の明示〕
 原告は、被告会社は原告から再三にわたり本件解雇理由とされた規則二六条一項二号、三号に該当する具体的事実を明らかにするよう求められながら、本訴提起に到るまでこれを明らかにしなかったのは適正手続を欠き、信義誠実の原則に反するもので権利の濫用であって、本件解雇は無効である、と主張するが、解雇理由とされた具体的事実の明示について、就業規則等に特別の定めがあるか、従来かかる明示がなされていてこれが慣行化されていた等の特段の事情があればともかく、かかる事情のない限りは、原則としてかかる明示をなすべき義務があるということはできず、このことは、被解雇者からその明示要求がなされた場合においても同様であるというべく、かかる明示のないことをもって適正手続を欠き、信義誠実の原則に反し、解雇権の濫用として解雇が無効であるということはできないものというべきである。そして、成立に争いのない(書証略)(被告会社の就業規則)によれば、被告会社の就業規則中には前記のような特別の定めは、ないことが認められ(この認定に反する証拠はない)、また本件全証拠によるも前記のような慣行が存することを認めることができず、さらに他に原告の前記主張を肯認するに足りる資料はないので、原告の右主張は理由がなく採用し難い。
 〔解雇―解雇事由―勤務成績不良・勤務態度〕
 その後は上司より再三にわたって督励、追求を受けても、その都度、電算機の精度上の問題であって実用化の目途はたたないとか、「シェイク」は欠陥プログラムであるとか述べて、全くこの仕事を進行させることなく、結局昭和五四年度上期中には何らの成果も挙げなかった。
 (中 略)
 「フラッシュ」の仕事についても外注を使いたいなどと言い張って再三にわたる説得にも応じようとせず、全くその仕事をすることなく、本件解雇に到るまで何らの成果も挙げていない。
 (中 略)
 原告の担当職務の成果は設計報告書又は文献調査の結果として現われるものであることは前示のとおりであるが、原告は、既に昭和五三年中から著しくこれが少なく、かつ質的にも低次のものであり、昭和五四年にはその成果が全くない状態であった。
 (中 略)
 原告は、本人が意識していたかどうかはともかくとして、仕事上のことで上司と話す場合でも、大声で怒鳴りつけ、あるいはわめき散らすといってもよいような態度をとり、本人に関する話合いもできないばかりでなく、周囲の者の業務遂行にも著しい妨害を来すのが常態であった。
 (中 略)
 原告の右のような非常識な言動は他の関係先、客先等についても再三みられ、被告会社はその都度相手方から叱責を受けるなどして苦境に陥り、その結果、被告会社の信用を著しく失墜し、業務遂行の上にもその被害が発生している。
 (中 略)
 被告会社の規則二六条一項二号に「仕事の能力若しくは勤務成績が著しく劣り、又は職務に怠慢なとき」、同条項三号に「会社業務の運営を妨げ又は著しく協力しないとき」は解雇する旨の規定があることは当事者間に争いがないこと前示のとおりである。而して、前示2(一)の(1)ないし(7)の事実を前提として、同2(二)(1)の(ア)ないし(エ)、同3(一)の(1)ないし(3)の各事実をみると、これが右規則二六条一項二号所定の、同2(二)の(2)、同3(二)の(1)ないし(3)の各事実をみると、これが右規則二六条一項三号所定の各解雇理由に該当することは極めて明白であり、したがって、被告会社のした本件解雇はその就業規則において定める解雇理由を具備した正当なもので、適法有効なものというべきである。