全 情 報

ID番号 00849
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 和進会事件
争点
事案概要  職場において他の従業員に対する共同絶交行為、無許可ビラ貼付行為等が就業規則の懲戒解雇事由にあたるとして普通解雇された組合委員長らが、右解雇は不当労働行為ないし解雇権の濫用にあたり無効であるとして雇用関係の存在確認等求めた事例。(請求棄却)
参照法条 民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係
解雇(民事) / 解雇事由 / 共同絶交行為
裁判年月日 1984年7月5日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 1176 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1194号3頁/労働判例439号44頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒解雇の普通解雇への転換〕
 本件において、被告は、就業規則上の懲戒事由該当の理由(懲戒解雇相当)をもって原告らを普通解雇に付しているものであるので、まずその法律上の効力について検討する。成立に争いのない(証拠略)によれば、被告の就業規則は、第二章に「懲戒」についての定めがあるが、同章中の六五条において「職員が次の各号の一に該当する行為があったときはそれぞれの情状に応じて懲戒する。」として全一六項の懲戒事由を定め、六六条で「懲戒は次の四種とする。」として、譴責、減給、諭旨退職、懲戒解雇の四種の懲戒処分を列挙している(以上、別紙(四)参照)が、その反面、普通解雇については、第七章「解雇および退職」中の三七条一項に「職員を解雇するときは、三〇日前に予告をする。ただし、予告期間については予告手当の支給によってこれを短縮し、または、これをおかないことがある。」と規定するだけで、普通解雇事由については格別定めがないことが認められ、また、労働協約等によって普通解雇事由が定められている旨の証拠もない。してみれば、普通解雇については、何ら解雇事由の制限はないのであるから、本件におけるように懲戒事由に該当する所為があることを理由として、懲戒処分としての懲戒解雇にせず普通解雇にとどめることも当然許されるものというべきである。ただ、右所為が形式的に懲戒事由に該当するとしても、解雇権を濫用したものと認められるような事情がある場合には右普通解雇も無効になるというべきであるが、その判断に当たっては、懲戒解雇との関係で解雇権濫用の成否を考える必要はなく、普通解雇との関係でその成否を考えれば足りるものと解する。
 〔解雇―解雇事由―共同絶交行為〕
 以上の事情、殊に前記1の事情に照らせば、原告らの共同絶交行為の実行に関する責任のみをとっても十分懲戒解雇に値し、被告に対して原告らとの雇用関係の継続を期待することは困難であるといわざるをえないうえ、原告Xについては職務怠慢(前記第二の三1及び第四の二3)、組合活動としてのビラ貼付(前記第二の三3及び第四の二4)に関する責任も認められること、また、本件解雇は正規の手続を履践したうえ、原告らの将来を特に考慮して、懲戒解雇に付さず、退職勧告をしたうえで普通解雇するにとどめたものであること(前記第三)、他に解雇権の濫用となる事情を窺わしめるに足りる証拠もないことを総合すると、被告が原告らを本件解雇に付したことは社会通念上相当として是認することができ、何ら合理性を欠くものとはいえないものというべきである。したがって、本件解雇が解雇権の濫用であるとする原告らの主張は採用できない。