全 情 報

ID番号 00853
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 都タクシー事件
争点
事案概要  タクシー運転手が、非番日に会社に無断で輸送車の移送、船積み等をするアルバイトを一ケ月平均七、八回行っていたことが、就業規則所定の懲戒解雇事由である会社の承諾なき兼職に当るとされたが普通解雇にとどめられたのに対し、地位保全等求めた仮処分申請の事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 二重就職・兼業・アルバイト
裁判年月日 1984年12月18日
裁判所名 広島地
裁判形式 決定
事件番号 昭和59年 (ヨ) 380 
裁判結果 認容
出典 労働民例集35巻6号644頁
審級関係
評釈論文
判決理由  前記の債務者の就業規則一三条一号、六九条四号は会社の事前承諾を得ない従業員の兼職を禁止しているものと解されるが、労働者は原則として労働契約に定められた労働時間のみ服務する義務を負うものであるし、右就業規則において兼業禁止違反の制裁が懲戒解雇を基準としていること等に照らすと、就業規則によって禁止されるのは会社の秩序を乱し、労務の提供に支障を来たすおそれのあるものに限られると解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、債務者のタクシー運転手の就労時間は午前八時から翌日午前二時までであり、勤務日が一か月一三日くらいでその余が非番日或いは休日となること、債権者のアルバイトの回数(多いときには一か月一〇回以上)、継続した期間、及び後記するように連絡責任者の地位はそれ程重要視すべきでないとしても、債権者からの連絡により債務者の従業員四、五人がアルバイトに行くようになること(予め定められた順に従って機械的に連絡していたとは認め難い。)、タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が要請されること等の事情を考えると、債権者の本件アルバイト(連絡責任者としての行為を含む)は、債務者の就業規則により禁止された兼業に該当すると解するのが相当である。
 (中 略)
 (しかし)債務者が債権者に対し何らの指導注意をしないまま直ちになした解雇は(懲戒解雇を普通解雇にしたとしても)余りに過酷であり、解雇権の濫用として許されないものと認めるのが相当である。