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ID番号 00929
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 松下建設事件
争点
事案概要  営業の廃止が使用者の責に帰すべからざる事由によるものとして、労働者の賃金請求権(民法第五三六条第二項参照)および休業手当請求権(労働基準法第二六条参照)が認められなかった例。
参照法条 民法536条2項
労働基準法26条
体系項目 賃金(民事) / 休業手当 / 休業手当の意義
裁判年月日 1953年3月23日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ネ) 342 
裁判結果
出典 労働民例集4巻3号26頁
審級関係
評釈論文
判決理由  被控訴会社は昭和二十四年三月頃からその経営するA会社が漸次不振の状態となったので、経営者においても極力回復に努めたが、金詰りの経済事情のため資金を得る方法に窮し、従業員に対する賃金の支払をも怠るに至ったので、従業員も組合を組織した上被控訴会社に対し経営方針の改善と賃金の支払を要求し、その結果同年七月十五日には右組合と被控訴会社との間に右に関する協約を締結すると同時に従業員においても経営に協力することを約し、被控訴会社及びその従業員において極力頽勢を挽回することに協力したが、その努力も空しく経営を継続することは益々困難となり、同月三十日には従業員の多数はこの事情を諒解し退職の已むなきことを観念するに至ったので、前記組合も被控訴会社との間に退職手当の支給を内容とする協約を締結し、次いで同年八月二日には更に被控訴会社の事情をも斟酌し前示内容の協約を締結したこと、及び爾後被控訴会社は殆んど工場閉鎖の状態となったことを認めることができる。右認定と牴触する前記証人B、及び控訴人X1、同X2の供述は措信しない。右認定の事実に徴すれば、控訴人X1の労務の履行不能は被控訴会社の責に帰すべからざる事由によって不能となったものと解するを相当とする。従って同控訴人は被控訴会社に対し昭和二十四年八月三日以降の賃金を請求しえないし休業手当についてもこれを請求し得ないものといわなければならない。然らば控訴人等の本訴請求は失当たるを免れないからこれと同趣旨の原判決は相当であって本件控訴は理由がない。