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ID番号 00953
事件名 執行方法に関する異議申立に対する即時抗告事件
いわゆる事件名 賃金仮差押異議申立事件
争点
事案概要  賃金債権の差押えにつき、賃金債権には譲渡性がないので許されないとして争われた事例。(否定)
参照法条 労働基準法24条1項,83条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 直接払・口座振込・賃金債権の譲渡
裁判年月日 1958年4月24日
裁判所名 東京高
裁判形式 決定
事件番号 昭和32年 (ラ) 609 
裁判結果 棄却
出典 下級民集9巻4号735頁/時報151号33頁/東高民時報9巻4号63頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働基準法第二四条は、抗告人主張のように、使用者が労働者に対して支払わなければならない賃金の全額を直接労働者に対し支払わなければならないことを規定しているが、それは使用者が労働者に対して支払わなければならない賃金は、労働者の生活の糧となることを考慮して定めたのに止まって、労働者の債権者が民事訴訟法第六一八条所定の制限の範囲外の賃金までをも差し押えることを禁止した趣旨の規定と解することはできない。労働者であるからといって、民事訴訟法第六一八条の差押制限を拡張して賃金全額について強制執行ができないと解さなければならない実質的な理由は現在の法体系の下では考えられないばかりでなく、労働者の災害による補償を受ける権利については、労働基準法は特に明文の規定を設け、第八三条第二項において「補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。」旨規定しているのに、労働賃金についてはこのような規定を設けていないことに照し合わせても、上記解釈の正当なことは容易に首肯しうるところである。右のような解釈は、何等憲法第二五条第二七条第二八条等の規定に違反するものでなく、抗告人の主張は抗告人独自の見解であって採用できない。