全 情 報

ID番号 00959
事件名 給与減額分支払請求および反訴請求事件
いわゆる事件名 群馬県教組事件
争点
事案概要  昭和三三年一〇月二八日または一二月一〇日の勤評闘争により無断欠勤したとして、翌年三月分の給与から賃金カットされた公立学校の教員が右カット分の給与の支払を請求した事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法24条
民法510条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1961年3月2日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 6 
昭和35年 (行) 13 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 行裁例集12巻3号551頁/時報255号18頁/タイムズ116号99頁/訟務月報7巻3号679頁/教職員人事関係裁判例集2号268頁
審級関係 上告審/00977/最高二小/昭45.10.30/昭和42年(行ツ)61号
評釈論文
判決理由  賃金を一部前払した場合には、その前払した分を後に支払うべき賃金から控除できるのであって、一定の期間内の労働に対する賃金が、当該一定の期間満了前に支払われることになるようにその支払日が定められている場合には、その支払日以後の賃金は、常に前払されているのであるから、該支払日後、期間満了前賃金債権が発生しない事由が生じたとき、当事者間には、その過払になった賃金を後に支払を受ける賃金から控除されることの黙示の合意があるものと解するのがむしろ実情にそうものと考える。このことは、支払日前に賃金債権が発生しない事由が生じたのにもかかわらず、支払日が接着しているため事実上控除できず全額を支払った場合も同様である。されば、労働基準法第二四条第一項は、このような調整的な相殺までも禁止しているものとは思われず、過払賃金の返還債権と賃金を相殺することは許されるものと解する。
 もっとも、このような賃金の相殺であっても、使用者が自分の好む額を好む時期に相殺したのでは、労働者は、思わぬ時に思わぬ生活上の苦痛を受けることもあるわけであり、したがって、相殺の額について民法第五一〇条、民事訴訟法第六一八条第二項の制限にしたがうべきはもとより、その時期についても客観的にみて合理的な理由がないかぎり、労働者がもはや控除されることはないと考えるようになった頃に相殺することは、労働基準法第二四条第一項の精神に反し、権利の濫用としても許されないものというべきである。