全 情 報

ID番号 00966
事件名 給与支払請求控訴事件
いわゆる事件名 福島県事件
争点
事案概要  支払賃金の内過払となった金額を後の賃金から減額されたため、労働基準法二四条の全額払原則に反するとしてその支払を求めた事例。(請求一部認容)
参照法条 労働基準法24条1項
民法510条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1965年7月14日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ネ) 174 
裁判結果 棄却(上告)
出典 行裁例集16巻8号1406頁/時報418号13頁/教職員人事関係裁判例集4号232頁
審級関係 上告審/00976/最高一小/昭44.12.18/昭和40年(行ツ)92号
評釈論文
判決理由  原判決の言ういわゆる「調整的相殺」は、賃金相互間の調整、清算若しくは後の支払期における給与額の計算方法としての意味を有するもので、その差引かれた時点に立って見ればそれまでの賃金の全額が支払われ結果において全額払の要件が充たされることになり、同じく相殺と言っても賃金とは無関係の他の債権をもってする相殺とは異るところがあるのであるから、これを原判決の判示するように労働者の日常生活の安定を保障するという労働基準法第二四条第一項の本来の立法趣旨に照して考えてみれば、右「調整的相殺」が(イ)給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、(ロ)事前に予め労働者にそのことが予告され、(ハ)相殺額にして労働者の経済生活の安定をおびやかす虞がない場合(その額については民法第五一〇条、民事訴訟法第六一八条第二項の制限に服すべきものと解する。)である限り右立法の趣旨に牴触するところはないと考えられるのであり、右法条の全額払の原則はかかる場合についてまでこれを禁止するものではないと解するのが相当である。
 これを本件について見ると、(中 略)。
 右減額中昭和三三年一二月一五日支払の勤勉手当欄記載の分についてはその時期、方法、金額において前記(イ)乃至(ハ)の要件を備える適法な調整的相殺として是認できるけれども、その余の部分(昭和三三年九月二一日支給の給与、暫定手当)については当該減額の事由が生じた月から四ケ月目に始めて減額の予告がなされた上五ケ月目の給与から減額がなされているのであるから、最早給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされたと認めるに困難であり適法な調整的相殺とは認め難い。