全 情 報

ID番号 00981
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 全明治屋労組事件
争点
事案概要  夏季一時金要求闘争に際して行なった時限ストに対して、翌月分給与において賃金カットが行なわれたので、組合員らが右控除額の支払を請求した事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1974年3月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 4350 
裁判結果 棄却
出典 労経速報846号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (人証略)によれば、昭和四六年七月は、一〇日にA労組合員以外の従業員に対する賞与の支給、二〇日には春闘妥結に伴う四月に遡る全従業員に対する昇給精算支給があり、給与担当者の計算事務が輻輳していたことと、春闘関係のストライキによる減額すべき賃金は闘争妥結後一括して清算されていたこと(右慣行の存在については、当事者間に争いがない)、以上の事務処理上の都合とか従来の取扱等の理由から、給与担当者において七月分定例給与から賃金カットをしなかったため、これを翌八月分定例給与から控除した事実が認定でき、他にこれを左右すべき証拠はない。
 右事実によれば、本件控除は、名実ともに七月の賃金過払分を清算調整するためになされたものであるということができる。
 (中 略)
 弁論の全趣旨によれば、同年八月分給与の調整のための計算期間内に、札幌支部において三時間、仙台支部において八時間三〇分の本件一時金要求関係のストライキが行なわれ、これに参加した組合員は八月分給与から右ストライキ分をも控除されていることが明らかであるが、右控除分を本件控除分と合算したとしても、八月分固定給与に占める割合がせいぜい六パーセント強にとどまることは、以上から容易に計算上推認できる。
 以上によれば、本件控除は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、かつ、その額は多額にわたらず労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれはないというべきであるから、労基法二四条一項の規定に違反しない。