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ID番号 01015
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 高知県ハイヤータクシー事件
争点
事案概要  第一組合の組合員解雇撤回を求めるスト、ピケのために就労を阻止された第二組合の組合員が不法行為を理由として、第一組合の上部団体、第一組合組合員等に対して、スト期間中の賃金相当額の損害賠償を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1975年1月20日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ワ) 359 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報785号108頁
審級関係 控訴審/01021/高松高/昭51.11.10/昭和50年(ネ)42号
評釈論文 秋田成就・ジュリスト620号127頁/西井龍生・判例評論204号29頁
判決理由  いわゆる政治ストなど使用者の解決しえない事項を要求する場合は別として、ストライキが使用者の経営政策上の理由に基づいてなされた場合には、右ストは使用者の支配領域内に生じた障害で、使用者において一般的に除去しえないものではないから、これをもって使用者の責に帰すべき事由による(民法五三六条二項)ものと認めるのが相当である。
 そして第二組合員の就労不能の直接の原因が、第一組合員のピケに阻まれたことにあったとしても、右ピケがストの一環として行われたものである以上、右と別異に解する必要はない。
 (中 略)
 右事実からすると、被告Yが横領したとされている一、〇〇〇余円の金員は、同被告に与えられたチップと目すべきもので、それを取得したとしてもタクシー料金の横領と認めることはできないから、前記解雇はその理由を欠いており、結局前記解雇は、訴外会社において被告Yの組合活動を嫌悪し、分会長であることの故をもって、同被告を職場から排除する目的でなした不当労働行為であるといわざるをえず、結局本件ストは、訴外会社が被告Yを不当に懲戒解雇し、地労委においても右解雇処分につき再考を促したにもかかわらず、これを聞き入れないで、懲戒解雇を強行したため発生したもので、訴外会社の不当労働行為に起因することが明らかであるから、一般のスト等の場合に比して、なお一層強い意味において使用者の責に帰すべき事由によるものといわざるをえない。したがって訴外会社は民法五三六条二項により原告らに対し賃金支払義務を負うものというべきである。
 (中 略)
 以上の次第で、原告らは訴外会社に対し本件スト期間中の賃金請求権を有するから、原告らには損害はないというべきである。