全 情 報

ID番号 01022
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 第一ハイヤーロックアウト事件
争点
事案概要  昭和三七年二月六日の春闘要求にはじまる組合側の時限ストの繰り返し、事務室、社長室等へのビラ貼付に対して、会社の業務が著しく妨げられているとして使用者がなしたロックアウトにつき、右ロックアウトを不当として労働者が未払賃金を請求した事例。
参照法条 民法536条2項
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1977年2月28日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (オ) 440 
裁判結果 棄却
出典 時報850号97頁/裁判所時報709号2頁/裁判集民120号185頁
審級関係 控訴審/札幌高/昭47. 2.18/昭和45年(ネ)107号
評釈論文 秋田成就・ジュリスト675号140頁
判決理由  一 思うに、個々の具体的な労働争議の場において、労働者の争議行為により使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認されると解すべきであり、使用者のロックアウトが正当な争議行為として是認されるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、このような相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるものというべきである(最高裁昭和四四年(オ)第一二五六号同五〇年四月二五日第三小法廷判決・民集二九巻四号四八一頁、同昭和四八年(オ)第二六七号同五〇年七月一七日第一小法廷判決・裁判集民事一一五号四六五頁参照)。そして、このようなロックアウトの相当性の要件は、その開始の際必要であるのみならず、これを継続するについても必要であると解すべきことは、当然といわなければならない。
 (中 略)
 三 原審は、これらの事実によれば、本件ロックアウトは、組合の違法な争議行為に対抗し、企業を防衛するために適法に開始されたものであって、先制的、攻撃的なものということはできないが、しかし、上告会社が組合の就労要求を拒否した昭和三七年八月一八日ごろには、組合はその組合員数を半減し力も弱くなっていたのに対し、上告会社は組織の大きくなった第二組合の組合員及び非組合員によって車両数も次第に増やして平常に近い営業を行い、経営内容も著しく改善されるなど客観情勢は上告会社にきわめて有利に変化していたのであるから、車検証、エンジンキーを返還しないなど組合に種々非難されるべき点があることを考慮しても、本件ロックアウトは前同日以降企業防衛の性格を失ったというほかなく、したがって、上告会社のロックアウトによる被上告人及び選定者らの就労不能は上告会社が就労を拒否した右同日以降その責に帰すべき事由によることとなり、上告会社はこれらの者に対し賃金支払義務を免れないと判断しているのであって、原審の右判断は、前記一に述べた見地に照らし、その結論において正当として是認することができる。論旨は、すべて採用することができない。