全 情 報

ID番号 01054
事件名 賃金支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本ブリタニカ事件
争点
事案概要  業績悪化を理由に会社再建案を提起した被申請人会社と組合との間の年末一時金に関する交渉が行詰ったまま日時が経過したため申請人らが協約を根拠に右一時金の仮払仮処分を申請した事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法2章,24条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1982年12月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和57年 (ヨ) 2265 
裁判結果 一部認容
出典 時報1065号187頁/労働判例399号32頁/労経速報1141号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  もっとも、一時金の支給額、具体的には基準内賃金に乗ずべき月数は、前認定のように、その都度会社と組合との交渉により決定されるべきものであるから、労使間にかかる合意(労使間協定)が存在しない以上、他に特段の事情のない限り、組合員において具体的権利として一時金を請求することはできないものといわなければならない。
 2 そこで進んで、本件において右特段の事情が存在するかどうかについて以下検討するに、《証拠略》によれば、
 (一)会社は、昭和五三年六月二二日、組合との間に、(1)賃金実績の確約、(2)地位・身分の保証、(3)労働協約の確認と実行、(4)労使慣行の遵守など、につき変更することなくA会社日本支社より引継ぐ旨の確認書を締結したこと、(中 略)。
 (二)会社は、右確認書の中の「賃金実績の確約」について、昭和五五年一一月二〇日組合に対し、そこにいう実績とは一時金については月数である旨の確認を行っていること、
 (三)会社は、前記の昭和五六年一一月九日付「自主再建基本計画に伴う協議事項についての申入書」において、昭和五六年年末一時金と昭和五七年夏季一時金の各基準内賃金に乗ずべき月数を「改定する事項」の中に含ましめ、あたかも一時金の月数が既に決定されているかのように取扱っていること、
 (四)更に右申入書において、一時金を削減することによる救済措置として、一時金減額分(対前年)の二分の一の範囲内で貸付を行うとし、あたかも前年の一時金実績を考慮することを前提とするかのような表現をとっていること、
 (五)会社は組合に対し、昭和五七年二月一五日、前記(一)の確認書をも含めた趣旨で、会社と組合との間に存在する期間の定めのない労働協約は全て維持することができないとしてこれらを解約する旨通知していることが一応認められる。
 これらの事実を総合すると、前記(一)の確認書の「賃金実績の確約」なる条項は、労働協約として、一時金については少なくとも前年同期の実績(基準内賃金に乗ずべき月数)が確保されるという意味を有するものと解される。