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ID番号 01086
事件名 賃金等支払請求事件
いわゆる事件名 誓願寺事件
争点
事案概要  退職金について定めた就業規則を無効とする使用者の主張につき、右規則の規定により退職金を支払うよう求めた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1980年5月9日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 782 
昭和51年 (ワ) 867 
裁判結果 一部認容
出典 タイムズ427号116頁
審級関係
評釈論文
判決理由  本件就業規則二八条及び退職金規定は勤続年数や退職事由別の支給率を設けず、単に一年以上の勤務者に対してその退職金支給率を一五〇とする旨定めているにすぎず、一般の退職金支給条件及びその支給実態とはかけ離れた特異な内容の規定となつている。
 (中 略)
 本件退職金規定は原告らが定年時まで勤務し、被告の財政管理に尽力することを前提として、もつぱらその定年退職時の退職金の定めとして制定されたものと認めるのが相当である。定年前の中途退職の場合については前記のように真剣に討議することもなかつたのであるから、右の場合にも智清が本件退職金規定を算定基準として用いるという明確な意思を有していたと認定することは困難である。そして、支給率の定めは退職金支給条件の重要な要素であつて、通常本件退職金規定のように勤続年数に触れない支給率の定め方はなされていないのであるから、被告代表者の明確な意思のもとに制定されたものならば格別、右のとおりその明確な意思を認定しえない以上、右規定は勤続年数に関わりなく一律の支給率を適用するという趣旨の規定であると解することはできない。結局右規定は、単に定年時の退職金算定基準としての効力を持つにすぎないと解するのが相当である。
 (中 略)
 以上の次第で、定年前の中途退職者である原告らの退職金算定基準として本件退職金規定をそのまま用いることはできないが、右規定は支給率の最高限を定めたものとしては有効であるからこれを合理的な限度まで減縮し、よつて得られた支給率を乗じて原告らの適正な退職金を算定するのが相当である。
 (中 略)
 《証拠》によれば、退職金支給率の形態としては一般に、一律増加型、段階的増加型、累進的増加型の三種があり、一律増加型は最も単純明快で事務的にも簡単なものであり、中小企業において多く採用されていることが認められる。
 そこで本件についてみるに、支給率の型としては被告の規模に鑑み一律増加型を採るのが相当であり、(後 略)。