全 情 報

ID番号 01093
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 大和病院事件
争点
事案概要  勤務先の病院が破産宣告を受け、破産管財人の管理下に置かれた後も従来の業務に従事して退職し、または解雇された職員らが、右宣告前に存在した退職金協定に基づき宣告前後の勤務年数を通算して計算した退職金のうち、宣告後の勤務年数に対応する部分は財団債権にあたるとして破産管財人にその支払を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法24条,89条1項3号の2
破産法3章
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 破産と退職金
裁判年月日 1983年4月12日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 4604 
裁判結果 認容
出典 労働民例集34巻2号237頁/労働判例407号23頁/労経速報1158号5頁
審級関係
評釈論文 小西国友・ジュリスト825号97頁/萩沢清彦・季刊実務民事法6号246頁
判決理由  原告X1、原告X2、原告X3の三名は、前記争いのない事実によれば、いずれも前記破産宣告後、前記病院業務を継続していた破産財団の従業員として被告に雇用されて勤務し退職したものであり、右原告三名の前記1(三)で認定した右破産財団に対する退職金債権は、右雇用契約に従った就労により生じたものである。
 従って、右原告三名の右退職金債権は、いずれも、破産者A破産管財人である被告が破産財団に関して為したる行為により生じたものというべきであるから、破産法四七条四号に該当する財団債権である。
 なお、右の点に関し、退職金は一般に功労報償金の性格も有し、破産宣告後の勤務による部分を区分できない全体として一個の債権であるから、その一部を財団債権とは為しえない旨主張するところ、確かに、前記退職金協定には勤続年数が増えると退職金全体を割増する方式が採用されている関係上、右原告一四名の退職金増加分(別表C欄記載の金額)に、破産宣告後の勤務年数が影響するが、この点は、一般に年功による賃金退職金の増加は是認されており、かつ、それが、前記(1)の事情で被告が従前の労働条件に従った雇用継続を選択したことの結果として予期すべきことである以上、右退職金の増加分を、破産宣告後の勤務により生じたとする妨げとはならず、また、前記1(三)で認定した退職金債権を特に不可分とすべき事情も見当らない以上、その一部を財団債権とすることに不都合はないといえるので、右被告の主張は採用できない。