全 情 報

ID番号 01236
事件名 懲戒処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 北九州市清掃局事件
争点
事案概要  勤務時間内職場集会参加、休日出勤拒否等を理由として減給、戒告その他の懲戒処分を受けた市職員労働組合等の組合員である市清掃局職員らが、右処分は不当労働行為、懲戒権の濫用にあたり無効である等として右各処分の取消を求めた事例。(棄却、労働者全員敗訴)
参照法条 労働基準法32条,35条,36条
体系項目 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務
労働時間(民事) / 法内残業 / 残業義務
就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立
裁判年月日 1983年3月16日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (行コ) 23 
昭和52年 (行コ) 24 
裁判結果 取消(上告)
出典 労働民例集34巻2号169頁/労働判例422号75頁
審級関係 一審/01228/福岡地/昭52.12. 2/昭和45年(行ウ)14号
評釈論文 渡辺裕・ジュリスト828号238頁
判決理由 〔労働時間―時間外・休日労働―時間外・休日労働の義務〕
 なるほど、法外超過労働、法定内休日労働の場合に三六協定に加えて、就業規則ないし協約に残業又は法定内休日労働を義務づける規定があるとき、このような事前の包括的同意から個々の労働者の意思に反しても残業又は法定内休日労働を義務づけうるとすれば、それは恒常的、継続的な残業又は法定内休日労働に道を開くことを意味し、同法三二条、三五条の趣旨を脱法するものといわざるを得ない。したがって残業又は法定内休日労働を義務づける就業規則の規定は同法三二条三五条に違反する限度で無効となるから八時間を超える残業、或は法定内休日労働を使用者から申し込まれても、個々の労働者がその都度その同意を与えた場合のみ労働契約上の残業義務、法定内休日労働義務が生じると解される。
〔労働時間―法内残業―残業義務〕
 法内超過労働、法定外休日労働の場合には、就業規則ないし協約で残業義務、或は法定外休日労働の義務づけ規定を設けても同法三二条、三五条違反とはならず、労働条件の基準となりうるものと解される。そして法内超過労働、法定外休日労働について就業規則ないし労働協約において、日時、労働内容、労働すべき者が具体的に定まっている場合には、命令権者の休日出勤命令を待つまでもなくそのとおりの休日労働義務が生じるが、概括的一般的な労働義務が定められているに過ぎぬときは、命令権者の出勤命令によって法内超過労働、法定外休日労働義務が具体化するというべきである。
 もっとも、かかる一般的概括的な法内超過労働、法定外休日労働規定がある場合に個々の労働者の義務を全面的に肯定すれば事実上所定労働時間制の建前を崩し恒常的な超過労働、法定外休日労働を容認する結果となり同法一五条の労働条件明示義務違反の疑問も生じる。したがってこのような場合には労働者にも法内超過労働、法定外休日労働を拒否しうる場合のあることは承認さるべきであるが労働者が法内超過労働、法定外休日労働を免れるためには出勤命令を受けた後、右労働を拒否しうべき正当事由の存在について当局に告知することが必要であると解すべきである。そしていかなる場合に労働者の拒否が正当とされるかは、基本的には、超過労働、法定外休日労働を命じた当局側の必要性と労働者の拒否事由の合理性との利益衡量によって判断すべきものと考える。
〔就業規則―就業規則の法的性質〕
 したがって、単純労務職員の勤務関係において、当該地方公共団体の長は、条例、労働協約及び労働基準法(以下労基法という)の定めに反しない限り就業規則の制定により勤務条件の決定を行うことができ、右就業規則には私企業における就業規則と異なり地方自治法により法的規範としての効力が与えられているものというべきである。