全 情 報

ID番号 01258
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 日本検数協会事件
争点
事案概要  時間外勤務の多寡により職種間で生ずる賃金格差の是正のために協約上設定された時間外保障手当を組合指令の時間外勤務拒否を理由に支払われなかった従業員らが、右時間外勤務拒否は正当な組合活動であり右手当の不払い事由に当らないとして、手当の支払を求めた事件の控訴審。(認容、労働者勝訴)
参照法条 労働基準法36条,37条
体系項目 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外労働、保障協定・規定
裁判年月日 1971年6月28日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 2564 
裁判結果
出典 労働判例130号60頁
審級関係
評釈論文 山本吉人・労働法学研究会報918号2頁/前田達男・季刊労働法82号109頁
判決理由  本件時間外保障手当は、時間外勤務の機会の多い職種職場で働く従業員と、その機会の少い職種職場に働く従業員との間の賃金格差の是正という趣旨に加えて(右趣旨の存することは当事者間に争いがない。)、後者の従業員はその賃金総額において社会一般の賃金の平均水準をはるかに下廻っているので、これを多少なりとも平均水準に近づけるという趣旨をもあわせもって制定された。
 (中 略)
 本件手当は先に述べたとおり、生活補償給的要素を保有している点において基準内賃金に準ずる性質を有してはいるが基準内賃金そのものではないのであるから、時間外勤務を命ぜられたのに、さしたる事由もなしにこれを拒否しまたは拒否するおそれの大である者、または時間外勤務に就労することが健康上その他の理由で不能であることが明らかである者(いわゆる時間外勤務をなす意思または能力を欠くと認められる者)に対してまで、本件手当の受給資格を及ぼすことは、たしかに不合理であるから、受給資格者から、これらの者を排除する途を残すという趣旨において制定された本件支給停止条項に合理性の存することは明らかである。
 (中 略)
 組合指令に基づく前記時間外勤務拒否を「理由なく」にあたると解釈することは労使の合理的意思に背反するばかりでなく、結果として、正当な組合活動に対する使用者の不利益取り扱いを容認することになり、著しく不当な結果を招来することになる。
 従って、組合指令による前記時間外勤務拒否は「理由なく」にあたらないと解釈すべきである。
 (中 略)
 もし、本件手当が純然たる基準外賃金で恩恵的なものであれば、右のような取り扱いも許されるかも知れないが、本件手当は、基準内賃金に準ずる生活補償給的要素を保有していることは先に述べたとおりであるから本件手当のこのような性質からしても、右のような取り扱いの許されないことは明らかである。