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ID番号 01260
事件名 時間外勤務手当等請求事件
いわゆる事件名 静岡県教職員事件
争点
事案概要  県立学校の教職員らが学校長の指示によって正規の勤務時間外にわたる職員会議に出席して時間外勤務をしたとして、時間外勤務手当を請求した事例。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 教職員の勤務時間
裁判年月日 1972年4月6日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (行ツ) 26 
裁判結果 棄却
出典 民集26巻3号397頁/時報662号23頁/タイムズ277号143頁/裁判所時報591号2頁/裁判集民105号509頁
審級関係 控訴審/00242/東京高/昭44. 2.13/昭和41年(行コ)7号
評釈論文 山本吉人・教育判例百選218頁/深山喜一郎・民商法雑誌67巻4号634頁/菅野和夫・色川,石川編・最高裁労働判例批評〔2〕民事編415頁/富沢達・法曹時報25巻10号145頁
判決理由  労働基準法三七条が、例外的に許容された時間外労働に対して割増賃金の支払を義務づけているのは、それによって、労働時間制の原則の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行なおうとするものであると解すべきところ、後述のように、本件職員会議出席のための時間外勤務がなされた当時、被上告人らにも右法条が適用されていたのであるから、これを受けた規定である給与条例一五条の解釈にあたっては、その定める時間外勤務手当の支給が、労働基準法三七条による割増賃金の支払と同様の役割を果たすものであることを考慮しなければならないのである。もっとも、勤務時間条例八条二項は、静岡県教職員に対して時間外勤務命令をなしうる場合を特に限定しており、それが、右労働基準法三七条の保護しようとする労働者の利益以上の公益上の要請に基づくものであるとするならば、これを無視することはできないけれども、それは、教職員の職務の性質上、時間外勤務に対する監督に困難が伴うので、原則として時間外勤務は命じないこととし、かたがた国および他の地方公共団体との関係において、その教職員との間の待遇上の均衡ないしその財政に累を及ぼすことのないようにとの考慮から、そのような制限を設けているものであると解されるのであって、そこには、具体的の場合に、上司の違法な命令に事実上拘束されて、勤務時間条例、同規則の定める正規の勤務時間以外の時間にわたって、本来の職務の範囲に属することがらについて勤務した個々の教職員に対する労働基準法による保護を無視してまでも維持しなければならないほどの公益上の要請があると解することはできないのである。このような点を考えれば、静岡県の公立学校において、校長の時間外勤務命令に基づき、教職員が正規の勤務時間以外の時間にわたって本来の職務の範囲に属することがらについて勤務をした場合には、校長に右命令の権限がなかったとしても、それが教職員に対して事実上の拘束力をもつものであるかぎり、上告人としては、右命令の行政法上の効力のいかんは別として、その瑕疵を主張して右時間外勤務に対する所定の時間外勤務手当の支給を拒むことは許されないものと解するのが相当である。