全 情 報

ID番号 01274
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 朝日急配事件
争点
事案概要  会社の指示で三六協定なしに時間外、深夜労働に従事していた貨物自動車運転手が、右時間外、深夜労働に対する割増賃金、附加金の支払を求め、しかも割増賃金の算定基礎額にはワンマン、チャーターの各手当を含めることを求めた事例。(認定額限度で認容)
参照法条 労働基準法32条,37条1項,2項
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定基礎・各種手当
裁判年月日 1983年3月25日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 3234 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例411号76頁/労経速報1172号9頁
審級関係
評釈論文
判決理由  そこで、被告が、割増賃金に該当し、算出の基礎賃金から控除されるべきであると主張する、ワンマン手当、チャーター手当、市内オーバー回数手当、長距離手当、長距離オーバー手当、帰荷手当(以下、これらを合わせ「ワンマン手当等の諸手当」という。)について検討するに、これらの諸手当の支給基準は前記認定のとおりであり、これによると、出勤すれば乗務しなくとも支給されるワンマン手当をはじめ、いずれも、時間外労働の時間に着目し、その時間数の多少に応じて支給されているものとは言い難い。また、前記認定のとおり、被告は、各従業員の時間外労働時間数を掌握していたのであるから、その時間数に応じた割増賃金を算出することも可能であったし、時間外労働に対する割増賃金として支給するのであれば、右の方法により支給した方が公平であるというべきである。さらに、このうち同じ時間内での仕事の量(あるいは能率)の多少に着目するものについては、それは、むしろ歩合給(能率給)としての性格をもつというにすぎず、歩合給が同時に割増賃金になるものとは解し難い。
 以上を総合すると、ワンマン手当等の諸手当は、いずれも割増賃金であるとはいえず、また、労基法三七条二項及び規則二一条によれば、割増賃金(算出)の基礎となる賃金に算入しない賃金として、家族手当、通勤手当、別居手当等六項目の除外賃金を規定し、かつ、右は限定的列挙であると解せられるところ、右のワンマン手当等の諸手当がいずれもこれに該当しないことは明らかである。従って、本件のワンマン手当等の諸手当は、割増賃金の基礎となる賃金であって、これから控除すべきではないと解するのが相当である。
 なお、前掲各証拠によれば、その他に、A、B、C等の名目の賃金が、回数又は日数に従い、支給されていることがあること、そのうちAはピアノの運送をした場合の手当であることが認められるが、その余は明らかではない。しかしながら、前記の限定列挙された労基法及び規則の除外賃金に該当するものではないと推認することができる。従って、右の諸手当も割増賃金の基礎となる賃金から控除すべきではないと解するのが相当である。