全 情 報

ID番号 01314
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本ナショナル金銭登録機事件
争点
事案概要  事業場内における政治活動を禁じた就業規則の規定に違反したとして懲戒解雇された申請人が、右解雇は不当労働行為である等として無効だと主張し地位保全と賃金支払の仮処分を求めた事例。(棄却)
参照法条 労働基準法34条3項
日本国憲法14条,19条
体系項目 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 休憩中の政治活動
裁判年月日 1967年10月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ヨ) 2125 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集18巻5号1051頁/時報506号56頁/タイムズ213号147頁
審級関係 控訴審/01585/東京高/昭44. 3. 3/昭和42年(ネ)2433号
評釈論文 正田彬・季刊労働法68号149頁/川崎武夫・判例評論112号38頁
判決理由  しかし、労働基準法第三四条第三項が休憩時間を自由に利用させることを使用者に命じているのは、労働者に義務を課するなどしてその休憩を妨げることを禁じたものであって、労働者が休憩時間中いかなる行為をも自由にできることを保障したものではない。従って、労働者は休憩時間中法の禁ずる行為をすることができないのは勿論、使用者がその事業場の施設及び運営について有する管理権にもとづいて行なう合理的な禁止には従わなければならない。換言すれば使用者が、事業場内における労働者のある種の行動を休憩時間中も含めて一般的に禁止しても、それが労働者を完全に仕事から切り離して休息させ、労働による疲労の回復と労働の負担軽減をはかろうとする休憩制度本来の目的を害せず、また事業場管理権の濫用にわたらない合理的な制限である限り無効ということはできない。これを本件についてみると事業場内において過すことを通例とする多数労働者の休憩時間が一部労働者の政治活動によって妨げられることがあっては休憩制度本来の趣旨はかえって没却されることとなり、ひいては事業場内における生産能率の低下をまねくおそれもないではないから、使用者が事業場内における労働者の政治活動を休憩時間中にそれを含めて一般的に禁止しても事業場管理権の濫用ではなく、もとより休憩制度本来の趣旨をなんら害するものではない。従って、事業場内における労働者の政治活動禁止を規定した就業規則の前記条項は物理的管理権の侵害を伴うと否とに拘らず、休憩時間中の政治活動一般に適用があるべきものであって、これと相容れない見解に立脚する申請人の主張はこれを採用し難い。