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ID番号 01386
事件名 訓告処分取消等請求事件
いわゆる事件名 津山郵便局事件
争点
事案概要  時季変更に従わず休んだことを理由に郵便局長がなした訓告処分及び賃金カットにつき、右時季変更には理由がないとして、未払賃金の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 年休利用の自由
裁判年月日 1980年11月26日
裁判所名 岡山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (行ウ) 9 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集31巻6号1143頁/時報1003号126頁/労働判例353号36頁/労経速報1077号10頁/訟務月報27巻2号355頁
審級関係 控訴審/03812/広島高岡山支/昭61.12.25/昭和56年(行コ)1号
評釈論文 佐藤康・昭和55年行政関係判例解説197頁
判決理由  〔年休―時季変更権〕
 労基法三九条三項にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたるか否かは、一般に、その事業の規模、年休請求者の職場における配置、その担当する業務の内容・性質、業務の繁閑、時季を同じくして年休を請求する者の人数等諸般の事情を考慮して、制度の趣旨に反しないよう合理的に判断すべきものと説かれており、これと大きく異なる見解をみないところである。
 次に、右の「事業」及び「正常な運営」を本件に即して考えるに、事業とは、原告の職場である津山郵便局集配課の担当する郵便業務のうちの外務事務(郵便物の取り集め及び配達)に限定することなく、より広く津山郵便局の業務の総体を指すと解すべきであるが、右郵便業務のうちの外務事務は、郵便局の業務のうちの最も主要な業務であることから右外務事務の障害は、直ちに郵便局の業務全般の障害につながる関係にあると考えられる。また、正常な運営とは、郵便業務のうちの外務事務に限っていえば、集配課で当日配達すべき郵便物(要配物)が滞留することなく配達されてしまう状態(滞留物数がない状態、完配ともいう)か、又は仮りに滞留物が発生するとしても、平常時のそれと著しくかけ離れていない状態(郵便物数のいわゆる波動的性質から、事情によっては、ある程度の滞留物が発生するのもやむを得ない場合があるであろう)と解するのが相当である。
 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―年休利用の自由〕
 年休をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であって、いわんや使用者がその利用目的によって、年休の時季変更をするか否かを差別して取扱うことは許されない。しかし、いかなる場合でもその取扱いに差異を設けることが禁じられるというものではなく、例えば競合する年休の請求が業務の正常な運営を妨げるため、いずれも時季変更の必要がある場合において、一の請求については、あらわれた資料から、社会通念上、その時季を変更することが妥当でないと判断して変更権を行使せず、そのような資料がなく事情の明らかでない他の請求についてはこれを行使したとしても、右のような判断が合理的なものであるかぎり、両請求を不当に差別して取扱ったと言うのは当たらないであろう。