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ID番号 01391
事件名 行政処分取消等請求控訴事件
いわゆる事件名 千葉中郵便局事件
争点
事案概要  組合の非専従執行委員として組合のオルグ活動実施のため年休を請求した郵便局職員が時季変更権の行使を受けたが当日欠勤したため戒告処分を受けたのに対し、右年休取得は適法であったとして戒告処分の取消等求めた事件の控訴審。(控訴認容、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法39条4項,89条1項9号
国家公務員法82条
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1983年3月14日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (行コ) 100 
裁判結果 取消 棄却(上告)
出典 労働民例集34巻2号135頁/東高民時報34巻1~3合併号34頁/労経速報1149号18頁/労働判例406号33頁/訟務月報29巻9号1702頁
審級関係 上告審/03015/最高一小/昭62. 2.19/昭和58年(行ツ)81号
評釈論文 秋田成就・公企労研究55号20頁/菅野和夫・公務員判例百選〔別冊ジュリスト88号〕116頁
判決理由  〔年休―時季変更権〕
 労働基準法三九条三項但書によるいわゆる時季変更権を行使するにあたって、使用者は当該事業場における諸般の事情を総合検討した上で当該年休を与えることがその事業の正常な運営を妨げることになるかどうかを判断すべきであるが、その判断のための合理的な基準をあらかじめ定立しておくことは、判断の客観性を担保して年休請求の処理を適正ならしめるために有用かつ妥当な方策であるというべきところ、控訴人が郵便課の業務の運営及び管理事項に属するものとして定めた欠務許容人員という前記基準定数は、郵便課における定員、現在員、週休定員及び予備定員の員数並びに業務の実情に照らして、右にいう業務支障の有無の判断基準として、合理的なものと認めるに足るものというべきである。そうして、控訴人は、郵便課における年休請求の処理にあたって、ただ欠務許容人員という基準定数に依拠するだけにとどまらず、さらに予測される業務量の趨勢と対比しながら、補充措置を講じうる服務状況にあるかどうかをもあわせ検討したうえ、当該請求に係る年休欠務による業務支障の有無を判断して時季変更権の行使如何を求める事務処理の方式を定着させていること、右の年休処理方式に則って、控訴人は、被控訴人が昭和四六年一一月一九日、二五日及び二六日についてした年休請求のうち、右の一九日につき年休を付与したが、右の二五日及び二六日につき年休を付与しないこととし、さらに被控訴人の年休請求に係る同年一二月九日についても年休を付与しないこととして、そのつど時季変更権を行使したことがいずれも前述の認定事実によって明らかであるから、右の二度にわたり、控訴人が被控訴人の請求に係る年休を付与しなかったことは、年次有給休暇制度の趣旨に照らし、労働基準法三九条三項但書による時季変更権の行使として、適正妥当な措置というべきである。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 被控訴人の年休請求に係る昭和四六年一一月二五日、二六日及び一二月九日については、いずれも控訴人が時季変更権を行使したことにより、被控訴人の服務が免除されるにいたらなかったし、しかも右時季変更権の各行使は、同時に被控訴人の上司である郵便課課長Aが被控訴人に対してその年休請求に係る右一一月二五日及び二六日の通常係の一六勤務並びに右一二月九日の通常係の日一勤務に服務すべき旨をそのつど指示する職務上の命令にほかならないものであるにもかかわらず、被控訴人は、右指示に係る三日間の勤務についてその服務を欠いた(このことは被控訴人において明らかに争わないところである。)ことにより、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない義務に違背し、その職務を怠ったものであるというべきところ、右は国家公務員法八二条一号、二号の懲戒事由に該当するというべきであるから、控訴人が被控訴人に対し右懲戒事由に基づいてした本件戒告は適法かつ有効であるといわなければならない。したがって、被控訴人の控訴人に対する請求は理由のないことが明らかであるから、これを失当として棄却すべきである。