全 情 報

ID番号 01445
事件名 未払賃金請求事件
いわゆる事件名 大瀬工業事件
争点
事案概要  就業規則に定める出勤奨励金制度において年休で欠勤した日を通常の欠勤日として取り扱われ、当該手当を支給されなかった従業員が、その支払を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法39条
体系項目 年休(民事) / 年休取得と不利益取扱い
裁判年月日 1976年3月4日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 1616 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報820号111頁/タイムズ346号284頁
審級関係
評釈論文 門田信男・判例評論216号37頁
判決理由  法三九条所定の年次有給休暇制度の法意は労働者をして、労働による肉体的、精神的疲労を回復させ労働力の維持培養を図るとともに、人たるに値する生活を得せしめる目的をもって、最低基準として、労働者の勤続年数に応じて毎年法定の有給休暇を権利として当該労働者に付与しなければならないとして使用者を義務づける一方(同条一、二項)、休暇期間中の賃金については、「平均賃金」又は「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」(以下、「通常の賃金」という)の支払を命じ、労働者が現実に出勤して労働した日(実出勤日)と実質的に同一の賃金を保障することよって(同条四項)、右休暇権を実効あらしめようとするにある。
 2 したがって、使用者が賃金体系上、賃金の一部を皆勤手当等の諸手当とし、その諸手当の全部又は一部を「年休を取得して休んだ日」のあることを理由にして支給しない旨就業規則等で明定することは、不支給となる当該手当が、労働者が現実に出勤して労働したことの故に支払われる実費補償的性格の手当(たとえば、通勤費の実額支給を内容とする通勤手当など)でない限り、前記年次有給休暇制度の趣旨に反する賃金不払として法的に許されないものというべきである。
 (中 略)
 これを本件についてみるに、被告会社の皆勤手当制度及び出勤奨励金制度の内容は、既述のとおりであるところ、右皆勤手当及び出勤奨励金が実質補償的性格のものということのできないことは既に認定した事実に徴して明らかであるから、被告会社の皆勤手当制度及び出勤奨励金制度についての就規等の定めにつき、「休暇願を提出し所属長の承認を得て取った休日」又は所属長の承認を得て休んだ日」に「年休を取得して休んだ日」を含ましめる解釈は違法であって、これを含まないとする解釈をして運用する限りにおいて有効な定めというべきである。
 (中 略)
 被告会社が原告らに「年休を取得して休んだ日」のあることを理由として支給しなかった皆勤手当及び出勤奨励金の全部又は一部の金員、即ち別表(一)、(二)、(三)の各第三欄記載の各金員は、被告会社において原告らに支払う義務があるものというべきである。