全 情 報

ID番号 01464
事件名 仮処分取消申立事件
いわゆる事件名 倉敷紡績事件
争点
事案概要  未成年者たる従業員につき地位保全の仮処分が出されたあと、従業員の両親が、当該未成年者をこのまま安城市におきその交友関係の中におくことは本人の前途のために不安を感ずるとして労働基準法五八条二項に基づく労働契約の解除をなしたことを理由に、使用者が右仮処分決定の取消を求めた事例。
参照法条 労働基準法58条2項
体系項目 年少者(民事) / 未成年者の労働契約
裁判年月日 1962年2月12日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (モ) 931 
裁判結果
出典 労働民例集13巻1号76頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働基準法第五八条第二項は親権者、後見人又は行政官庁において労働契約が未成年者に不利であると認めるときは親権者等に労働契約を解除する権利を与えているが、何が「未成年者に不利である」と認めるかの判断基準については法は別段規定していないから、その認定は一応解除権者にまかされているというべきである。従って、解除権者が不利と認定して使用者に対し労働契約解除の意思表示をした以上、使用者はこれを争う余地はないものと解すべきである。しかし、不利なることの認定が解除権者の判断にまかされているといっても、直ちにそれが解除権者の恣意的判断までも許しているものとみるべきではない。何となれば、法は不利なることの具体的基準は明示していないが、親権者等に解除権を与えた所以は未成年労働者の保護にあることに鑑み、第五八条第二項の「不利」とは、未成年者の当該労働契約を継続することがその労働条件又は就労状況からみて未成年者のために不利益である場合をいうものと解すべきである。かかる場合に親権者、後見人はその監護教育権に基き、又行政官庁はその行政上の監督権に基いて解除権を行使することができるのである。従って右の趣旨を越えて、解除権者の使用者に対する好悪の感情、末成年者又はその交友との信条の相違、親権者の家庭事情等の解除権者の都合による事由に基いて不利を認定して解除権を行使するのは権利の濫用とみるべきであって、かかる場合は解除の効力を生じないものというべきである。