全 情 報

ID番号 01469
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 中川煉瓦製造所事件
争点
事案概要  労働時間に関する労働協約に違反する就業規則の改正につき、労働基準法九二条に違反して無効とし、出来高給に関する変更についてはその効力を承認した事例。
参照法条 労働基準法92条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 労働時間・休日
就業規則(民事) / 就業規則の変更と協議条項
裁判年月日 1950年10月13日
裁判所名 大津地
裁判形式 決定
事件番号 昭和25年 (ヨ) 31 
裁判結果
出典 労働民例集1巻5号875頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔就業規則―就業規則の一方的不利益変更―賃金賞与・労働時間〕
 労働契約と就業規則との関係を規定する労働基準法第九十三条は、就業規則に定める労働条件をして、当該事業場における労働者の最低限度の労働条件の保障たるべき効力を認めたに止まり就業規則よりも有利な労働条件を定める労働契約の有効であることは勿論であるから、申請人の見解のように、本条が就業規則を以って既存の労働契約よりも不利な労働条件を定めることを禁ずる趣旨を含むと解すべき余地は全くなく、また就業規則を以って賃金労働時間等を規定することを禁ずる法律上の根拠もない。従って使用者が就業規則を既存の労働契約よりも不利な労働条件に変更することはもとよりその自由であり、而もそのことによって既存の労働契約には何らの影響なく、労働者は既存の労働契約による権利義務を保存するものというべく、本件就業規則の変更が既存の労働契約に反する故を以って直ちに当然無効であるという申請人の主張はその理由がない。
 〔就業規則―就業規則の変更と協議条項〕
 右変更就業規則中就業時間に関する部分の効力の有無についてかんがえてみるのに、本件労働協約第二十八条によれば「労働日の就業時間は九時間とする」と規定されていることは疏第一号証によって明かであるのに、右変更就業規則においてはこれが右協約の定めよりも三十分間延長された九時間半になっているのであるから、該変更規定は労働基準法第九十二条第一項の規定に背馳するものであって、その効力なきものといわねばならない。