全 情 報

ID番号 01482
事件名 退職金請求控訴事件
いわゆる事件名 大阪日々新聞社事件
争点
事案概要  退職の前年に退職金規定が不利益に変更されたため、変更前の退職金規定に従った退職金の支払を求めた事例。(一審 一部認容、二審 一部認容控訴棄却)
参照法条 労働基準法89条,90条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 意見聴取
就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金
裁判年月日 1967年3月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (レ) 151 
裁判結果
出典 労働民例集18巻2号228頁/時報480号64頁/労経速報605号3頁
審級関係
評釈論文 香川孝三・ジュリスト418号121頁/川口実・法学研究〔慶応大学〕40巻9号93頁
判決理由  〔就業規則―意見聴取〕
 (二)被控訴人は、右退職金規定の変更は控訴会社の労働組合であるA労働組合の意見を聴かないでなされたものであるから、労働基準法第九〇条第一項に違反し無効であると主張するが、同条は、就業規則の内容如何は労働者の利害に関係すること大でその作成変更に当り労働者の正しい意向が反映することが望ましいことにかんがみ、使用者をして労働者の過半数で組織する労働組合またはその過半数を代表する者の意見を聴くという手続を取らせることにし、その違反には制裁をもって臨み間接にこの手続を強制しているにとどまるものであって、規則の作成、変更にあたり組合等の意見に拘束されることを予想したものではないから、これに違反しても処罰の対象となるのは格別規則自体の効力には関係がないと解すべきである。したがって、被控訴人のこの点の主張は採用できない。
 〔就業規則―就業規則の一方的不利益変更―退職金〕
 (三)次に、被控訴人は、就業規則の労働者側に不利益な変更は労働者側の同意がない限り許されず、同意なくして変更された退職金規定は無効であると主張するが、就業規則の作成変更に関する労働基準法の規定全体からみると、法は使用者に対し就業規則の作成変更に当って労働者の過半数で組織する労働組合またはその過半数を代表する者の意見を聴取する義務を認めただけで、就業規則の作成変更を使用者の一方的行為に委ねているものと解さざるを得ないから、変更された就業規則の内容が従前のものより労働者側に不利益であるというだけの理由で無効であるということはできない。
 しかしながら、就業規則は使用者の一方的行為によって作成変更されるものであるから、賃金、労働時間その他労使対等の立場において決定さるべき労働条件に関しては労働基準法第九三条により最低基準規範としての効力のみを持つにすぎず、既存の労働条件が就業規則の定める基準を上まわる場合においてまでこれに変更を加える効力を有するものではないと解すべきである。また退職金といえども支給の条件、範囲が明定されている場合には賃金に準ずるものとして右にいわゆる労働条件の一に属するものと解するのが相当である。
 しかして、本件の場合、退職金支給に関し、基準を上まわる個別契約があったとの主張、立証はなく、従前旧規定の内容が労働契約の内容となって控訴会社と被控訴人との間を規律していたものと認められるところ、被控訴人の現職最終月の基本給が一五、六〇〇円であることは当事者間に争いがなく、《証拠略》によれば、被控訴人の現職最終月の基準賃金総額は基本給一五、六〇〇円、勤続手当九、七〇〇円、精勤手当一、〇〇〇円、扶養手当三、二〇〇円の合計である二九、五〇〇円であると認められ、退職金に関する既存の労働契約は新規定の定める基準を上まわったものであること明らかである。そうすると控訴会社と被控訴人との間で新規定の定める基準による旨の合意のない限り、旧規定が妥当することになるものといわなければならない。