全 情 報

ID番号 01514
事件名 賃金等請求事件、損害賠償請求事件
いわゆる事件名 エアポート事件
争点
事案概要  使用者が賃金体系を改定したため、新体系による賃金を受取り退職したが、改定について同意していないとして賃金差額の支払を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法89条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 1981年4月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 617 
昭和55年 (ワ) 460 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1093号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由  賃金体系の改定は、賃金の点について原告に不利益となる部分も含まれることが認められるから、右改定については原告の同意が必要であったものと解すべきところ、(人証略)中には、被告が昭和五三年二月二一日の賃金体系変更日の二、三日前に原告を含む従業員に右改定を伝え、店の更衣室に新しい賃金体系を表示した掲示をしたが、原告を含む従業員からそれについてなんらの異議も出なかったとの部分があり、また、原告はその後改定後の賃金体系による賃金を受取ったことについては当事者間に争いがないが、原告が改定後の賃金体系による賃金を受取ったのは、(人証略)によれば、原告が被告を退職して間もなくである昭和五四年九月一〇日頃、被告に対して、旧賃金体系による賃金と新賃金体系による賃金との差額の精算を求めたこと、原告は右改定当時被告に雇傭される前からの原告の得意客に対し案内状を発送したばかりであり、しかも原告は被告から受取る賃金を唯一の生活手段としていて、旧賃金体系による賃金に固執した場合には、賃金全額の受領を拒まざるを得ず、ひいては被告を辞めざるを得ない事態となる惧れがあったことがそれぞれ窺われることに徴し、原告が改定後の賃金体系による賃金を受取ったからといって、それをもって原告が前記賃金体系の改定に同意をしたものと認めることはできず、また右の点と(人証略)に徴すると、(人証略)はそれをそのまま信用することはできず、その他に右同意があったことを認めるに足りる証拠はない。
 従って、右賃金体系の改定は、原告に対して効力を発せず、被告は原告に対し右改定前の賃金体系による賃金を支払うべき義務があることになる。