全 情 報

ID番号 01688
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 銚子醤油事件
争点
事案概要  政党機関紙への記事(「一人十殺」)掲載を理由とする懲戒解雇について、右行為はいまだ懲戒解雇に価しないとして、効力停止の仮処分申請を認容した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 1956年8月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和31年 (ヨ) 4007 
裁判結果
出典 労働民例集7巻4号672頁/タイムズ61号107頁
審級関係
評釈論文 労働経済旬報391号18頁
判決理由  寧ろ右記事は、労働者の極端な生活の窮乏を訴え、この窮乏を脱却するためには、一人で十人に当る気構をもって、団結して被申請人会社に対抗し、ストライキの手段に訴えても、二ヵ月分の賞与を是非獲得しなければならないことを強調した趣旨と解するのが相当である。従って、文書の用語が不穏当で非難を免れないとしても、その意味が不法なものでないのであるから、賞与の獲得が労働者にとって切実な要求であるという社会経済事情を考慮に入れ、情状酌量するのが相当であり、同申請人等の右行為は、懲戒解雇に価しないものといわなければならない。
 (中 略)
 叙上のとおり、申請人等には、懲戒規定に該当する行為の疎明がないか、又は懲戒規定に該当する行為があるけれども、その情状懲戒解雇に処することは相当ではない。そして、使用者が就業規則に懲戒解雇規定を定めた場合は、使用者自ら解雇権を制限し、これに該当する事由がなければ、有効に解雇をなし得ないものと解するから、申請人等に対する本件解雇の意思表示はいずれも就業規則の適用を誤ったもので無効である。解雇の意思表示が無効であるのにかかわらず、被申請人会社からこれが有効として取り扱われ、申請人等が従業員たる地位を否定されることは著しい損害であるから、右意思表示の効力の停止を求める本件仮処分の申請は理由がある。