全 情 報

ID番号 01708
事件名
いわゆる事件名 西日本鉄道事件
争点
事案概要  電車運転者に対する所持品検査につき、これを拒否したため出勤停止処分および懲戒解雇がなされ、無効確認の請求がなされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 所持品検査
裁判年月日 1964年12月14日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典 労経速報521号5頁
審級関係
評釈論文
判決理由  乗務員らに対する所持品検査は被告会社にとって不可欠のものであることが窺知できるので、これを拒んでならないとする右就業規則の定めは合理的な理由があるものというべきである。次に、このような所持品検査が不当に労働者の人権を侵害するものかどうかであるが、この点は当該検査の方法、実施時刻及び場所等について具体的に検討して決すべき問題であるところ、本件で問題となった昭和三五年三月一一日実施の脱靴による靴の中の検査についてみると、前記認定のとおり、(1)予め所持品検査場として定められていた補導室において、乗車勤務終了直後の原告ら乗務員に対し実施されたものである。(2)同室を板敷きとしてその上で検査を行ない、被検査者がその上に上るときは自然に脱靴せざるを得ず、検査員がその場で一々脱靴の指示をしなくても靴の中の検査を行なうことができるような方法で行なわれた。(3)右方法は被告会社が被検査の人権や感情の問題を慮って考え出したものであるが、これについて、被告会社は、事前に原告ら所属の組合の北九州支部との間で話し合いをしその実施について了解を得ていた。しかして、右支部は右方法による所持品検査の実施について機関紙をもって所属組合員に周知させたが、原告も右検査当時これを了知していた。右(1)ないし(3)の点に加え、前掲乙第一五号証によれば、同日の検査員たる前記Aは、右検査直前に上司から靴の中の検査も実施するよう指示されると同時に行き過ぎや被検査者に対する感情刺激のないように特に注意されたこと、しかして、右検査の際原告の感情を刺激しないように努めたことを認めることができ、この認定に反する証拠はない。以上の諸点からみれば、右の脱靴による靴の中の検査は、不当に原告の人権を侵害するものとはいえない。
 そうすると、原告は右所持品検査に当たり脱靴して靴の中の検査を受けるべき義務があったものといわなければならず、これをあくまで拒否した原告の前記行為は、明らかに就業規則第八条に違反するものとして違法たるを免れず、原告の前記主張は採用できない。