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ID番号 01710
事件名 従業員たる地位確認請求控訴事件
いわゆる事件名 弘南バス事件
争点
事案概要  絶対的平和義務違反の争議行為に対し、懲戒処分の対象となしうるか否かが争われた事例。(消極)
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法16条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1964年4月14日
裁判所名 仙台高秋田支
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ネ) 85 
裁判結果
出典 労働民例集15巻2号268頁
審級関係
評釈論文 宮崎鎮雄・法政研究31巻2号63頁
判決理由  会社は本件争議は賃上げと協約改訂を目的とするものであるところ、本件解雇理由とされている被控訴人らの行為が行われた昭和三五年三月中においては、右争議は会社、組合間の昭和三四年三月一〇日締結の賃上げ争議妥結協定第三項「今後の労使関係について双方は良識と理解と信義に立脚する企業繁栄のための最善の努力と協力の関係を確立する。」および同月二五日締結の細目協定第六項「組合は会社の昭和三四年度事業計画達成のため全面的に会社に協力するとともに、労使間は問題を常に平和的に解決する。」との各条項により生ずべき昭和三四年三月三一日までは争議に訴えない旨の絶対的平和義務に違反し、かつ、協約第八三条は「本協約の有効期間は、調印の日から昭和三五年六月七日迄とする。期間満了後一カ年を限り有効とする。但し、期間内でも両者の合意により変更することができる。」と定めているので、協約に内在する相対的平和義務にも違反する違法のものであるから、これを認識して右争議に参加した被控訴人らは、その参加の程度、行為の態様に応じ、その責任を免れないと主張するが、仮に会社主張のような争議妥結協定および細目協定がなされ、これを会社主張のように絶対的平和条項であると解しうるとしても、これに違反する本件争議は組合の債務不履行責任を生ずるにとどまり、個々の組合員に関して争議行為の正当性を失わせるものではないから、被控訴人らが右争議妥結協定および細目協定違反の本件争議に参加したことをもつては同人らの責任を問い得ないこともちろんであり、会社の絶対的平和義務に関する主張は理由がない。