全 情 報

ID番号 01725
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 西日本鉄道事件
争点
事案概要  所持品検査の際靴を脱ぐことを拒否したために懲戒解雇処分に付された原告が、雇用契約上の地位確認と賃金支払を求めた事例。(一審 棄却、控訴棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 所持品検査
裁判年月日 1967年2月28日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ネ) 33 
裁判結果
出典 労働民例集18巻1号108頁
審級関係 上告審/01736/最高二小/昭43. 8. 2/昭和42年(オ)740号
評釈論文 渡辺章・ジュリスト402号141頁
判決理由  よって、当裁判所は最終事実審として原判決の認定を含む本件の情状につき、しさいに検討を加えたのであるが、運輸事業を目的とする被控訴会社においてはその企業秩序を維持し、企業成績の向上を図るために従業員に対する所持品検査が必要不可欠のものであること前説示のとおりであり、かつ、原判決に認定した控訴人の本件脱靴拒否に因る就業規則違反行為の態様、その他の情状(原判決理由第一の二の(三))にかんがみれば、右違反行為は唯一回のそれであったとしても、職場秩序を破壊する悪質のものであって、被控訴会社が懲戒の種類として他に出勤停止その他の定めがあるに拘らず、あえて最も重い懲戒解雇の処分を選んだこともやむをえないところであり、これを以て客観的妥当性を欠くものということはできない、と考える。
 同条に規定する「所持品」とは乗車賃等の不正隠匿及び領得行為を防止乃至摘発する、という所持品検査の目的から考えると、本来検査を受けるものの占有に属するすべての物件に及ぶべきであるが、検査を受ける従業員の人権尊重の見地からみて、検査の方法、個所などに制限を受けざるをえない結果、所持品検査にはおのずからある程度の制限があるものと解すべきである。しかし原判決認定の如き方法による靴中の所持品検査は不当に従業員の人権を侵害するものでないから、控訴人も右の方法による靴中の所持品検査を受忍する義務があると解されることは原判決説示のとおりである。