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ID番号 01810
事件名 懲戒処分無効確認等請求控訴及び附帯控訴事件
いわゆる事件名 石川島播磨重工業事件
争点
事案概要  会社の寮運営、労務対策等について事実を歪曲、誇張したビラを配布したこと等を理由として、出勤停止処分、減給処分を受けた従業員らが、懲戒処分無効確認等を請求した事例。(一審 請求一部認容一部棄却、当審 控訴認容、請求棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 始末書不提出
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1976年5月17日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 272 
昭和49年 (ネ) 1281 
裁判結果 附帯控訴棄却 一部取消(上告)
出典 時報825号95頁
審級関係 一審/東京地/昭49. 1.31/昭和46年(ワ)11351号
評釈論文 近藤昭雄・季刊労働法102号101頁
判決理由  (五)以上のとおり、本件ビラの記載内容は事実を歪曲し、控訴人の寮運営及び労務対策を中傷誹謗する記載である。《証拠略》によれば、被控訴人両名のビラの作成及び配布は、控訴人に対する寮の待遇及び設備の改善の要求を実現するために、近く行われる組合役員の選挙に、右の点につき理解を有する者を推せんする目的をもってなされたものであることが認められるが、かりに動機や事情が右のとおりであったとしても、本件ビラの記載内容が事実を歪曲し、控訴人の寮の運営及び労務対策を中傷誹謗するものであることに変りはない。従って控訴人の従業員である被控訴人両名がした本件ビラの作成及び配布は、就業規則第七七条第一五号にいう控訴人に不利益となる浮説を宣伝流布した行為に該当する。
 そして、前記のとおり控訴会社の内部に種々の反響をひき起しているのであるから、控訴人が懲戒処分したからといって不当なことではない。
 そして、懲戒処分中出勤停止処分を選択し、被控訴人両名を一日の出勤停止処分に付したのは、相当であるということができる。
 (中 略)
 右ビラは被控訴人Yの原審における供述によると、同人が組合の職場代議員の選挙に立候補し、その支持を有権者に訴えるために作成、配布したものであることが認められるから、被控訴人Yに控訴人を不当に中傷誹謗する意図があったとまでは認められない。しかしその意図するところが何であれ、その記載内容は職場の環境と従業員の安全に関するきわめて重要な事柄であり、それゆえにビラの及ぼす影響は大きいとみられるから、その記載内容が虚偽または誇張にわたることのないようその表現に配慮する必要がある。
 以上のとおり、被控訴人Yの作成、配布したビラは、その記載内容において事実を歪曲ないし誇張するものであるから、控訴人の従業員である同被控訴人のした右行為は、就業規則第七七条第一五号にいう控訴人に不利益となる浮説を宣伝流布した行為に該当する。
 (四)《証拠略》によると、控訴人は被控訴人Yの右行為は就業規則第七七条第一五号に該当し、本来ならばその情状を酌量しても減給処分に付すべきところ、同人は若年であって勤務も浅く、これまで懲戒処分を受けたこともないこと、特に控訴人側から事情を聴取された際その非を認めたとして、これらの点を考慮し今回はけん責処分にとどめることとしたこと、そこでA勤務課長は昭和四六年一〇月一五日、被控訴人Yに対し、右のとおりのことを説明し、就業規則第七二条第一項第一号に基づくけん責処分により始末書を提出するよう求めたこと、ところが同被控訴人は「事実に反することは書いていない」旨答えて、始末書の提出を拒んだこと、同課長は重ねて説得に努めたが同被控訴人は態度を変えなかったので、当日は処分を保留して退去させたこと、同月一八日B鋳鋼工場課長は、同被控訴人にCの同課長あての手紙を示し、同被控訴人が誤っているとし、けん責処分に服して速やかに始末書を提出するよう説得したところ、同被控訴人は一日の猶予を求めたが、翌一九日右課長と会い、依然としてその態度を変えなかったこと、その結果一一月一二日減給半日の懲戒処分がなされたことが認められる。そして、その経緯によれば、この処分をしたことは相当であるとみられる。