全 情 報

ID番号 01853
事件名 免職無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 国鉄小郡駅事件
争点
事案概要  使用者のなした懲戒免職処分につき、右処分は裁量権の範囲を逸脱したもので無効とした原判決の取消を求めた控訴事件。
参照法条 日本国有鉄道法31条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
裁判年月日 1979年9月4日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ネ) 28 
裁判結果 取消(上告)
出典 労働民例集30巻5号891頁/時報955号116頁/労働判例329号49頁
審級関係 上告審/01885/最高二小/昭56.12.18/昭和55年(オ)1号
評釈論文
判決理由  被控訴人は、本件免職処分は裁量権の範囲を逸脱し、又は権利の濫用に当るものとして無効である、と主張する。
 国鉄法三一条一項は懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の四種類を、懲戒事由として「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」と規定しているが、具体的基準の定めはなく、右業務上の規程である控訴人の就業規則六六条は具体的懲戒事由を定めているが、各懲戒処分毎の懲戒事由の定めはないところ、このような場合、懲戒権者は、懲戒事由に該当する行為の外形的なもののほか、原因、動機、状況、結果等のほか、当該職員について前記二、7末段記載のような諸般の事情を斟酌したうえ、企業秩序の維持確保の見地から相当と判断する処分を選択できるのであって、当該処分が社会通念上、当該行為との対比において甚しく均衡を失して合理性を欠くものでない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして是認されるべきものである。
 右見地から本件を検討すると、被控訴人の行為は傷害罪をともなった公務執行妨害罪にあたる軽視し得ない犯罪行為であり、単に偶然的なものとはいえず、懲役五月執行猶予一年の有罪判決が確定しているのであり、前記懲戒処分歴も無視し得ないものであり、懲戒処分のうち免職処分についてはその重要性に鑑み特に慎重な配慮を要することなどを勘案しても、控訴人の総裁が被控訴人に対し本件行為につき免職処分を選択した判断が甚しく均衡を失して合理性を欠くものとするには足りず、裁量権の範囲を超えた違法なものあるいは権利の濫用にあたるとは認め難い。