全 情 報

ID番号 01905
事件名 懲戒処分無効確認請求事件
いわゆる事件名 明治乳業事件
争点
事案概要  休憩時間中に会社食堂において無許可で赤旗号外等のビラを配布したことがビラ配布等の許可制を定めた就業規則、労働協約に違反するとして戒告処分を受けた従業員が、右処分は懲戒権の濫用にあたり無効である等として右処分の無効確認を求めた事例。(上告棄却、労働者勝訴)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1983年11月1日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (オ) 617 
裁判結果 棄却
出典 時報1100号151頁/タイムズ515号118頁/労経速報1169号3頁/労働判例417号21頁/金融商事696号33頁/裁判集民140号259頁
審級関係 控訴審/01865/福岡高/昭55. 3.28/昭和51年(ネ)746号
評釈論文 香川孝三・季刊実務民事法6号234頁/山川隆一・ジュリスト852号221頁/山田省三・労働判例429号4頁/新谷真人・季刊労働法131号156頁/石橋洋・季刊労働法142号48頁/浜村彰・日本労働法学会誌64号106頁
判決理由  上告人の就業規則一四条には「会社内で業務外の集合又は掲示、ビラの配布等を行なうときは予め会社の許可を受け所定の場所で行なわなければならない。」と定められており、また、上告人とA労働組合との間で締結された労働協約五七条にも同旨の定めがあるところ、被上告人の本件ビラの配布は、いずれも上告人の許可を受けないものであった。
 (中 略)
 右の赤旗号外及び日本共産党参議院議員選挙法定ビラ(以下「本件ビラ」と総称する。)の配布は、食事中の従業員数人に一枚ずつ平穏に手渡し、他は食卓上に静かに置くという方法で行われたものであって、従業員が本件ビラを受け取るかどうかは全く各人の自由に任され、それを閲読するかあるいは廃棄するかもその自由に任されていた。また、右の配布に要した時間も数分間であった。
 ところで、被上告人の本件ビラ配布は、許可を得ないで工場内で行われたものであるから、形式的にいえば前記就業規則一四条及び労働協約五七条に違反するものであるが、右各規定は工場内の秩序の維持を目的としたものであることが明らかであるから、形式的に右各規定に違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右各規定の違反になるとはいえないと解される(最高裁昭和四七年(オ)第七七七号同五二年一二月一三日第三小法廷判決・民集三一巻七号九七四頁参照)。そして、前記のような本件ビラの配布の態様、経緯及び目的並びに本件ビラの内容に徴すれば、本件ビラの配布は、工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に当たり、右各規定に違反するものではないと解するのが相当である。
 したがって、右と同旨に出て被上告人に対する本件戒告処分を無効とした原審の判断は相当であり、原判決に所論の違法はない。